2月の貿易統計では、貿易収支が20カ月連続の赤字となった。赤字幅こそ縮小したものの、輸出が想定以上に伸び悩み、収支改善の足かせとなっている。「円安=貿易黒字」。そんな日本の“勝利の方程式”は、再考を迫られている。貿易赤字の主因は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」による円安が、原子力発電所の長期停止で増大した火力発電所用の燃料価格上昇を招いたためだ。 政府の誤算は、円安効果による輸出拡大が、短期的な輸入コストをカバーするとされた「Jカーブ」効果の不発だ。民間エコノミストらの間では、輸出額が上昇カーブを描くまでのタイムラグは「半年から約1年」とされたが、それを過ぎた現在も明確な兆候がみえていない。 背景にあるのは、円高時代に国内企業がリスク回避のために進めた生産拠点の海外移転だ。この結果、円安状況でも、大幅な輸出拡大につながりにくい。 企業の競争力低下も課題だ。内閣府によると、日本経済の需要