「横浜の風景の一部となるようなフォントを作りたい。横浜の歴史やストーリーとともに、10年20年と長く使われて、暮らす人や訪れる人の記憶に残るものになれば」。 タイプフェイスデザイナーの両見英世さん(タイププロジェクト)が手がける「濱明朝」は、そんな思いを込めた新しいフォントだ。どこか懐かしさを感じさせるレトロな形と、モダンな雰囲気を兼ね備えた明朝体。濱明朝で打った文字を見ていると、横浜の街を訪れたときに感じる「美しさ」と「にぎやかさ」——赤レンガ倉庫やホテルニューグランドから、山下公園、中華街、ランドマークタワーまで、さまざまな景色が浮かんでくるから不思議だ。 両見さんが「濱明朝」を作り始めたのは、いまからさかのぼること7年前。自身が所属するフォントメーカー・タイププロジェクトの「都市フォント構想」の一環として始まった。都市フォント構想とは、都市が持っている個性や魅力を取り入れたフォントを