『赤目四十八瀧心中未遂』の車谷長吉48歳が、高橋順子49歳と結婚した理由 情熱的読書人間・榎戸 誠 私にとって、車谷長吉(くるまたに・ちょうきつ)と言えば、『赤目四十八瀧心中未遂』(車谷長吉著、文春文庫)である。男が女を好きになるということ、女が男を好きになるということを、これほど激しく、血が迸るほど鮮烈に描いた小説に出会ったことがないからだ。そして、この作品は、人間が生き延びようとする喘ぎ、呻きに満ちている。 夫を見送った妻の手になる『夫・車谷長吉』(高橋順子著、文藝春秋)を読んでよかったことが、3つある。第1は、車谷という風変わりな人物の内面を知ることができたこと。第2は、車屋と高橋順子という異質な二人が結婚するに至った過程と、その後の夫婦関係をつぶさに知ることができたこと。第3は、『赤目四十八瀧心中未遂』執筆の裏話を知ることができたこと。本書のおかげで、好奇心の塊である私は、知ること