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ブックマーク / honz.jp (22)

  • 『絶海――英国船ウェイジャー号の地獄』訳者あとがき - HONZ

    絶海: 英国船ウェイジャー号の地獄 作者: デイヴィッド・グラン,David Grann 出版社: 早川書房 発売日: 2024/4/23 書『絶海――英国船ウェイジャー号の地獄』は、2023年にダブルデイ社から刊行されたデイヴィッド・グランのノンフィクション、The Wager: A Tale of Shipwreck, Mutiny, and Murder の翻訳である。 原書は、刊行された2023年4月からこれまで40週以上連続でニューヨーク・タイムズのベストセラーリストにランクインしている。オバマ元大統領の2023読書リストに選ばれた他、CBSニュースの番組「60ミニッツ」が書と著者グランの特集番組を制作放映。ウォール・ストリート・ジャーナル、GQ、エコノミスト、ボストン・グローブ、ニューヨーク・タイムズ、トロント・スター、ロサンゼルス・タイムズ、ニューヨーク・マガジン、タイ

    『絶海――英国船ウェイジャー号の地獄』訳者あとがき - HONZ
  • 科学はいまだに法律に導入されない 『人を動かすルールをつくる──行動法学の冒険』 - HONZ

    作者: ベンヤミン・ファン・ロイ,アダム・ファイン 出版社: みすず書房 発売日: 2023/5/18 わたしたちは法律や条例などのルールに囲まれて生きている。そして、それらの多くがわたしたちを深刻な危害から守ってくれていることは間違いない。だがその一方で、何らかの理由でルールがうまく機能していない場合も少なくない。ほとんどのドライバーが守っていない、ある道路での速度制限。日々新たに報じられる、企業のコンプライアンス違反。では、そうした一部のルールがあまり守られないのはどうしてだろうか。 書はその問題に真正面から挑んだものである。ただし、その挑み方は従来のものとは異なる。書は、「どうして人はルールを守らないのか」と問うたりはしない。そうではなく、人に一定の行動傾向があることを前提として、「どうして法的ルールは人の行動を改善できないのか」と考えるのである。 わたしたちには一定の行動パター

    科学はいまだに法律に導入されない 『人を動かすルールをつくる──行動法学の冒険』 - HONZ
  • 動物を愛し性を意識する人々 『聖なるズー』 - HONZ

    今年度の開高健ノンフィクション賞を受賞した傑作だ。京都大学大学院で「文化人類学におけるセクシュアリティ研究」に取り組む女性が、単身ドイツに渡り、複数の動物性愛者(ズー)の家を泊まり歩いて丹念に取材している。最初私は「動物性愛」ときいて腰が引けたが、興味が打ち勝って書を開いた。すると、こんな書き出しが待っていた。 私には愛がわからない。 ひと口に愛といっても、いろいろなかたちがあるだろう。 この書き出しに続いて、長年受けてきた性暴力についての著者の自分語りが始まる。それは、動物性愛研究の動機でもあり、また、著者がズーの質に迫ることができた理由でもある。書には欠かせない告白だ。このプロローグを読めば、異種間の性に対する興味位のではないことがわかり、私は思わず引きこまれてしまった。 異種間の性といっても、獣姦と動物性愛が似て非なるものであることを、最初に断っておかなければならない。とき

    動物を愛し性を意識する人々 『聖なるズー』 - HONZ
  • 『資本主義と闘った男』我々がまだ知らない本当の宇沢弘文とは - HONZ

    私たちはまだ当の宇沢弘文のことを何も知らない・・・これが書を読了しての思いである。そして、宇沢とは何者で、どこから来て、どこへ行こうとしていたのか、その全てを詳らかにしてくれるのが書である。これをきっかけに宇沢の功績の再評価が行われるに違いないと確信させる、経済学歴史に残る名著である。 「ノーベル経済学賞に最も近かった日人」であり、「社会的共通資」(Social Common Capital)の重要性を訴えた思想家である「宇沢弘文」という巨人の全貌を理解するのは至難の業である。その裾野は限りなく広く、その頂きは限りなく高く、私たちを容易には近づけてくれない。 そうした意味で、宇沢は自身が語っているように、ひとりぼっちの孤独な思想家であり社会活動家だった。多くの天才たちが同時代の人々に理解されてこなかったように。そして、その孤高の天才の86年に及ぶ生涯を、大部な640頁の評伝にま

    『資本主義と闘った男』我々がまだ知らない本当の宇沢弘文とは - HONZ
  • 『ネコ・かわいい殺し屋 生態系への影響を科学する』野良ネコへの愛情はリスクを孕む - HONZ

    書を読む少し前、環境省による奄美大島のノネコ(野生化したネコ)への対策が議論を呼んでいるとのニュース記事を読んだ。ノネコが国の特別天然記念物であるアマミノクロウサギなどを捕するため、昨年夏から捕獲が始まり、引き取り手が見つからなければ殺処分される。そのために動物愛護団体との対立が深まっているというものだ。野良とはいえ、あんな気ままでのんびり屋のネコがそこまで脅威になるのかと思っただけだったが、このを読んでから、考えを改めねばならないと感じている。 増加するペット由来の野放しネコ(イエネコ)が生態系、環境、公衆衛生に及ぼす影響を、科学的根拠に基づいて丹念に示したのが書『ネコ・かわいい殺し屋』である。訳者あとがきによれば、ネコを生態系の外来捕者としてとらえた初めてのであるという。著者のピーター・P・マラはアメリカのスミソニアン動物園で渡り鳥の研究をする鳥類学者で、もう一人のクリ

    『ネコ・かわいい殺し屋 生態系への影響を科学する』野良ネコへの愛情はリスクを孕む - HONZ
    mekurayanagi
    mekurayanagi 2019/05/06
    岩合光昭さんに感想をお聞きしたいところ。
  •  絶望的にヒーロー不在『八甲田山 消された真実』フィクションとノンフィクションと - HONZ

    神成大尉は、二一〇人の兵隊を凍死させたのは自分の責任であるから自分は自殺する、舌を噛んで自殺すると。…… ベッドの上で正座して話す老齢の男性――その人は、世界最大級の山岳遭難事故の最後の生存者・小原中三郎元伍長であった。 1902年(明治35年)1月。日露戦争を前に陸軍は寒冷地での行軍を調査・訓練するため、青森の陸軍歩兵第五聯(れん)隊と弘前の第三十一聯隊が豪雪の八甲田を異なるルートで越えることになる。結果的に三十一聯隊は八甲田を越え帰還したが、五聯隊は山中で遭難。210人あまりの将兵のうち、199人もが凍死した。世に言う「八甲田山雪中行軍遭難事故」である。 これをもとに書かれた新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』は、大ベストセラーになった。映画化された「八甲田山」で北大路欣也演じる第五聯隊の神成(役名は神田)大尉が猛吹雪のなか、こう叫ぶシーンをご存知の方も多かろう。 天はわれらを見放した

     絶望的にヒーロー不在『八甲田山 消された真実』フィクションとノンフィクションと - HONZ
    mekurayanagi
    mekurayanagi 2019/03/18
    “だがしかし、小説や映画の完成度があまりに高かったために、あたかもそれが「史実」とすり替わってしまったことには複雑な気持ちが残る。”
  • 『山口晃 親鸞 全挿画集』五木寛之「親鸞」連載で全開になった山口晃ワールド - HONZ

    厚さは約4.5cm、総ぺージ数696の大型だ。重さは1kg以上。我が家のキッチンスケールの針が振り切れたので計測不能だった。 2008年9月から2014年7月まで1052回にわたって地方紙に連載された五木寛之の長編小説『親鸞』に添えられていた挿画の総集である。もちろん1052点の挿画は原画通りフルカラーで収録されている。 若い世代には、五木寛之の小説を読んだことはないが、山口晃の絵は好きだという人も多いかもしれない。私もその口で、この挿画集は楽しみにしていた。 山口晃の絵の魅力は見る側の想像力をかならず超えることだ。代表的な作品イメージとしては、狩野派のような金雲を使った画面構成で現代と近代が融合した繁華街を俯瞰し、さらに機械仕掛けの馬に乗った戦国武士まで登場させるという、時間と空間を横断した作品だ。その筆致は精密で、画家の奇想をそこかしこに見つけ出す楽しみもある。下手をすると絵の前に3

    『山口晃 親鸞 全挿画集』五木寛之「親鸞」連載で全開になった山口晃ワールド - HONZ
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    mekurayanagi 2019/03/16
    欲しいが…
  • ビジネスと恋愛って似てる?『ブスのマーケティング戦略』 - HONZ

    このはブスの自虐エッセイではない。れっきとした実用書である。 という前書きから始まるこのを私はビジネス書コーナーでみつけた。『ブスのマーケティング戦略』完全にタイトル買いだ。帯には入山章栄氏推薦との文字もあり興味を引いた。入山氏は2016年に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』でベスト経営書を受賞している。ブスのマーケティングとはいったいどんななのだろう? このがめざしているのは下記の2つである。 1. ブスの幸せな結婚 2. ブスの経済的な自立 ブスだと自覚をした著者が幸せな結婚を掴むために、様々なマーケティング手法を用いていく話だ。面白おかしく書かれた個人の体験談が中心のため、マーケティングを学ぶためにこのを読んでもあまり役には立たないだろう。ただモテるためにマーケティングの手法を用いるというのは確かにありかもしれないと思わされる1冊だった。 まずはプロダクト

    ビジネスと恋愛って似てる?『ブスのマーケティング戦略』 - HONZ
    mekurayanagi
    mekurayanagi 2019/03/01
    ドラマ化してタイトルで炎上するパターンか。
  • 『全電源喪失の記憶 証言・福島第1原発 日本の命運を賭けた5日間』あのとき何があったのか - HONZ

    あの日、自分はどこで何をしていたのか。みんなが語ることができる。それぞれの国の国民には、そんな共通の大事件や大ニュースがあるものです。 かつてアメリカでは、それはジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件でした。その後、2001年9月11日の同時多発テロになりました。 いま日で共通の記憶は、2011年3月11日でしょう。東日大震災の発生のとき、どこにいて、何をしていたのか。北海道や九州・沖縄の人にとってはテレビニュースで津波が押し寄せる映像を見たときの記憶が、いまも鮮明でしょう。 東日では、いつ止むともわからない絶望的な長時間の揺れに脅えた時間だったことでしょう。 私はあの日、成田空港に着陸態勢に入っていた全日空機の中でした。アメリカ・ワシントンでの取材が終わって帰国するところだったのです。いったん着陸態勢に入ったものの、機は上空で周回を始めました。「大きな地震が発生し、空港が閉鎖になりまし

    『全電源喪失の記憶 証言・福島第1原発 日本の命運を賭けた5日間』あのとき何があったのか - HONZ
  • 『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 コロンバイン高校銃乱射事件。1999年4月20日、コロンバイン高校の学生2人が無差別に発砲を行い最終的に自殺、教師1人と生徒12人が死亡し、24人が負傷した傷ましい出来事だ。発生から15年以上が経った今なお学校銃乱射事件の代名詞的存在とされるのは、犯人であるエリックとディランがそれぞれ卒業を間近に控えた、18歳・17歳の少年だったという若さだけが理由ではない。 2年以上をかけて準備されていた計画の周到さ。そして、何百人もの生徒たちでにぎわう昼時のカフェテリアを爆破するという残虐な構想。計算ミスや完成度の低さにより爆弾は不発に終わったものの、実際の被害を遥かに上回るその計画の大きさは、人々の間に驚きと恐怖の渦を巻き起こした。 言うまでもなく、この事件を題材にして過去に多くのが書かれ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ
    mekurayanagi
    mekurayanagi 2017/07/23
    “「なぜ」という答えは永久に分らなくても、「どのように」という過程を追うことはできる”
  • HONZで振り返る2015年 今年のノンフィクションはこれを読め! - HONZ

    に関する記事を毎日のように送り出しながら面白さを感じるのは、ネットのニュース記事などと比べて時間の流れ方の異なる点である。 予期していたかのようにタイムリーに出されたものもあるが、少し時間を経たからこそ全貌の見えてきたもの、社会的な関心事ではないが特定の層にはズバッとささるもの、時代の流れを全く読まなかったから生まれてきたものも、大半を占める。 時宜を得たものと突然変異、過去と未来、つながりと孤独、異なる2つの視点が隣り同士に並ぶ棚こそが美しい。そこで今年HONZでよく読まれた記事の中から、各月ごとに上位2冊の書籍をピックアップし、2015年を振り返ってみた。 1月:「イスラム国(IS)」とホッケ 2015年は年明けから物々しかった。1月7日にイスラム過激派がフランスの「シャルリー・エブド」を襲撃。1月20日にはついに日人が「イスラム国(IS)」の人質になる事件も起き、日中を震撼さ

    HONZで振り返る2015年 今年のノンフィクションはこれを読め! - HONZ
  • 『生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』サイショー先生が東工大にやってきた! - HONZ

    『絶対音感』、『セラピスト』、『星新一』など多彩なテーマの著作で知られる最相葉月さんが、東工大にて非常勤講師として前期の4ヶ月間行った講義の記録である。この講義は池上彰さんの誘いによって実現したそうだ。東工大生、色々とうらやましすぎる。 「生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか」というタイトルから、最相さんが毎回どのように著作のテーマを選ぶかを話すのかと予想する人もいるかもしれないが、自身については自己紹介でさらっと触れる程度だ。取り上げられるのは様々な分野の研究者たちである。先人たちが取り組む研究の内容と、そのテーマに至るまでの人生、という2つの柱をもとに講義は進んでいく。 最相さんがいかに適役かということは、著作や記事を読んだことのある人なら容易に想像できるだろう。『セラピスト』で書かれた精神医学の中井久夫先生、『ビヨンド・エジソン』で書かれた博士12人の内の1人である地震学者の石田瑞穂先生

    『生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』サイショー先生が東工大にやってきた! - HONZ
  • 『寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」』諸行無常の響きあり - HONZ

    今、日全国には77,000にも及ぶ寺院が存在するという。コンビニの数が52,380店というから、その多さに驚かれる方も多いだろう。だがもっと驚くのは77,000のうち、住職がいない無従寺院の数が20,000を上回るという現実である。 昨年「地方消滅」という言葉が、世間を賑わせた。2040年までに人口が急減し、896もの自治体に消滅の可能性があると報じられている。この地方の人口問題はまだ警鐘が鳴らされている段階にすぎないのだが、寺院の問題は既に消滅期へと突入しているのである。 書は、そんな寺院の未来、現在、そしてターニングポイントとなった過去までを連ねた一冊である。著者は、僧侶の資格を保持する経済記者。消えゆくものを見える化するために全国津々浦々を回り、情報を足で稼ぐ必要があった。北海道、鹿児島から、離島や被災地まで。その取材量が、まさに圧巻である。 限界集落とも呼ばれる過疎の村。その多

    『寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」』諸行無常の響きあり - HONZ
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    mekurayanagi 2015/06/01
    同じ過疎の影響を受けるにしても、神社はもともと無住が多いから問題視されにくいんだろうな。
  • 『老人たちの裏社会』生き地獄化する余生 - HONZ

    65歳以上の高齢者の万引きの増加が話題になったのは20年ほど前だったか。当時は全体に占める割合が1割に達したことで注目を集めていた。 書によると警察庁発表の犯罪統計では高齢者による万引きは2011年には未成年者の検挙数を追い抜き、直近の公表値である13年は32.7%を占め過去最高を記録したという。万引き犯の3人にひとりが65歳以上という状況だ。人口全体が高齢化していることを踏まえても異常な増え方だ 万引きだけではない。ストーカーも60代以上の13年度の認知件数が10年前の約4倍に増え、他の世代の1.7-2.6倍に比べて高い増加率を示す。驚くべきなのは暴行の検挙数。2013年には94年比45倍超の3048人に急増している。原因も「激情・憤怒」が60%以上を占め、次点の「飲酒による酩酊」の14%を大きく引き離す。酔っぱらって、「何だ、この野郎!」と酒場で暴れる老人を想像しがちだが、当に凶暴

    『老人たちの裏社会』生き地獄化する余生 - HONZ
    mekurayanagi
    mekurayanagi 2015/03/21
    あとは死ぬだけの「最強の人」達。
  • 『革命キューバの民族誌』理想と現実の狭間から見える新しい生き方 - HONZ

    キューバを賞賛し理想的な未来を託す人たちは高度で無料な医療や教育、英雄チェ・ゲバラやフィデル・カストロを語る。一方で、キューバに怪訝な印象を持ったり、近代化の遅れを叱責する人たちは、旧ソ連及び社会主義陣営解体後の悲惨な経済状況、サトウキビの生産に頼った産業、左翼の理想郷として語る。中立的なところでは、オリンピックでメダル常連の野球、大リーグにも選手を数多く排出している。 しかし、あの世界中を震撼させた革命、その後に目指した理想的な国家と「新しい人間」としての国民のあるべき姿はどうなったのか。キューバ革命は国外では神話化し、様々なメディアやで繰り返し語られ、革新的なイメージが複製されている。だが、革命後に起こった数々の動乱を乗り越え、理想に裏切られ現実を生きるキューバの中の人は、今、どんな生活をし、何を考えているのだろうか。社会主義体制や革命の英雄たちについてどう考え、日常的に語らっている

    『革命キューバの民族誌』理想と現実の狭間から見える新しい生き方 - HONZ
  • 『真実 新聞が警察に跪いた日』 - 栄光からの転落 - HONZ

    時代がいくら変わっても、新聞には変わらない役割があります。その重要な 一つが権力監視、権力チェックではないでしょうか。権力監視の力は弱くなってきたと言われていますが、読者のためにも権力監視の役割を放棄するわけにはいきません。北海道警察の裏金問題の報道は、まさにそうした、新聞来の役割を取り戻すための作業でした。 2004年10月、書の著者・高田昌幸氏が北海道新聞取材班の代表として、報道界最高峰と言われる新聞協会賞を受賞した時のスピーチである。このときの「北海道警裏金問題追及キャンペーン」は素晴らしい仕事であった。一連の調査報道は、このほか日ジャーナリスト会議大賞、菊池寛賞も受賞し、北海道新聞の勇名を日中に轟かせた。事件の取材においては警察との「友好関係」が欠かせない警察記者クラブの記者たちが、よくぞ踏ん張って戦ったものだなあと、私も当時感心した記憶がある。 かっこいいなあ新聞記者。頼

    『真実 新聞が警察に跪いた日』 - 栄光からの転落 - HONZ
    mekurayanagi
    mekurayanagi 2014/05/24
    この本を読んで感じたのは、人はここまで良識を欠落させたまま社会正義を掲げて生きることができるのかと言う底なしの絶望感。
  • 『記者たちは海に向かった』 - 半径10kmのジャーナリズム - HONZ

    記録を残すとは、時に残酷なものである。 書の表紙をめくると、そこには一枚の写真が掲載されている。カメラに向かって微笑む、福島民友新聞の6人の記者たち。撮影されたのは、2011年3月9日。後方には激震と津波によって後に消失してしまう「ろうそく岩」もそびえ立つ。そして6人の運命が、やがてジグソーパズルのようにバラバラに引き裂かれていくことを、彼らはまだ知らない。 記録を残すとは、時に希望を生み出す。 2011年3月12日の福島民友新聞の社説は、このような書き出しで始まる。 <私たち福島県民にとって、これまでに経験したことがない、想像を絶する揺れだった。> 一次資料もなく、被害状況も分からず、周囲が安否確認をしているさなかに書き出された文章は、助け合い、支え合うことへの呼びかけを目的とし、多くの被災者の元へと届けられた。 だが、このわずか3日ほどの間に、福島民友新聞の中では想像を絶するドラマが

    『記者たちは海に向かった』 - 半径10kmのジャーナリズム - HONZ
  • 究極の私ノンフィクション『セラピスト』 - HONZ

    最相葉月さん、やっぱりうまい。いまさらながら感じ入った。『絶対音感』以来、大ファンなのである。こういうのは言い続けているといいことがある。一年半ほど前、元阪大総長である鷲田清一先生が最相さんと対談された時、ファンであることをご存じであった鷲田先生が、その後の事に誘ってくださった。(対談録はこちら:pdf) 対談は『わが心の町 大阪君のこと』というエッセイの話からはじめられた。無名であったといっていいころの堺雅人と、いまはどうしているのか真中瞳で『ココニイルコト』という映画になった名エッセイである。次に鷲田先生が尋ねられたのが、どうして、絶対音感や、東大応援団、青いバラ、生命倫理、星新一など、脈絡がないほどにいろいろなテーマ、それも、誰も論じていないテーマに挑んでいかれるのか、ということであった。 『私自分の仕事をそんな風に褒められることが無かったので、当にすごくここに座りづらいんですけ

    究極の私ノンフィクション『セラピスト』 - HONZ
    mekurayanagi
    mekurayanagi 2014/02/14
    最相さんの新刊とは嬉しい。
  • 新刊ノンフィクションを選ぶ方法 「8月2日に買った本」 - HONZ

    東えりかさんが、HONZメンバーによる「8月のこれから読む」をまとめてくれている。 /3584 今回も面白そうなだらけで悔しかったので、これとは別にあらたなを仕入れたのである。予想してない反撃をされたHONZメンバーの悔しがる姿が目に浮かぶというものだ。愉快である。今回はなぜそのを選んだのかについて少し紹介してみよう。 『リーマン侍 江戸語の世渡り』はタイトルで買った。このタイトルは歌舞伎に馴染のある読者へのゴキブリホイホイだ。弁天小僧の台詞「しらざあ、言って、聞かせやしょう」で有名な、通称「白波五人男」という演目は「青砥稿花紅彩画」というふうに文字で書き、その読みは「あおとぞうし はなの にしきえ」なのだ。つまり歌舞伎の演目というのは体言止めで5-7、7-7というようなリズム刻むのだ。

    新刊ノンフィクションを選ぶ方法 「8月2日に買った本」 - HONZ
  • 『妻と飛んだ特攻兵』 - 大空に舞った白いワンピース - HONZ

    ごく稀に、年に数回ほどだが、まるで導かれたかのように一冊のと遭遇することがある。書の強烈な磁力は、完成されたグラフィック広告のような表紙から発せられていた。 タイトルと写真を見た時の「この女性が!」という驚き。続いて副題の「8・19満州、最後の特攻」を眺める。「満州に特攻隊?」「8月19日って、終戦後のことなのか?」など、次々に湧き上がってくる疑問… まるで映画のエンディングのようなシーンから書は始まる。 ”「女が乗ってるぞ!」 滑走路を走る飛行機の後部座席に、さらさらと風になびいている長い黒髪が見えたのだ。そしてほどなく群衆は、あの白いワンピース姿の女性も忽然と姿を消したことに気づいたーーー。” 九七式戦闘機に乗っていたのは、ソ連軍戦車に特攻しようとする谷藤徹夫少尉(当時22歳頃)。そして見送りにきていたはずの・谷藤朝子(当時24歳頃)が、いつの間にか後部座席に。1945年8月1

    『妻と飛んだ特攻兵』 - 大空に舞った白いワンピース - HONZ