「人口減だから低成長」という説が正しくないのは、経済成長論を知っている者なら無論だが、俗耳には入りやすい。世間的には、売れている新書が常識であり、経済史の成果は、縁遠いものでしかない。そんな中、吉川洋先生が『人口と日本経済』を書き下ろしてくれた。橘木俊詔先生が言われるように、老練の学者こそ、基本的問いに答えるにふさわしい。本書の豊かな内容が過剰なペシミズムの解毒になってくれたらと願う。 ……… 経済成長は、労働力と設備投資の増加、それに生産性の向上で決まる。経済成長に対する労働力の貢献度は小さいものでしかなかったから、人口で成長率が決まらないことは、明らかだ。とは言え、弱みがあるのは、最大の要因である生産性の向上が何で得られるかは、漠然としていて、経済学は明快な処方箋を出せずじまいなことだ。これも「人口減だから低成長」という話が膾炙する理由の一つだろう。 割り切って言うと、生産性の向上は、