地域に伝わる「昔話」はよく聞きますが、地域の「史実」として語り継がれる、忘れられない物語に出会いました。襲ってきた男を刺した〝罪〟で、その名を残した一人の女性がいます。その存在は「貞操を守った象徴」から「自分の意思を貫く存在」へと、時代を経て変わってきました。200年前に生きた女性が、なぜ今も人々をひきつけるのか。「松江さん」を巡る物語をたどります。(朝日新聞松山総局記者・寺田実穂子) 【画像】父親が刀を手に…「生き人形」のリアルなシーンはこちら 意思の強さを感じる「松江さん」の表情 江戸時代に生きた女性の壮絶な人生「松江さんの人形が見つかった! 小学校にあった!」 今年の夏、松山市の港町、三津浜地区に住む田中安子さん(72)の明るい声が電話口から飛び込んできました。 田中さんは、松山出身の俳人・正岡子規や、松山が舞台の小説「坊っちゃん」を書いた夏目漱石に関する様々なイベントを企画していて