私の父は板前、いわゆる和食の職人です。 小さい頃から父が調理場に立つのを見てきました。 同時に旅館の社長でもあったのですが、専ら調理ばかり。 早朝から魚市場に行き、仕込み、お客様の夕食まで。 365日休みなく働く父を見て、子供心に感謝はしつつも、 自分はこの仕事をしたくないと思っていました。 父は誠実で正直な人です。 私が車の仮免許を取った時、父が助手席に座り運転の練習に付き合ってくれたことがありました。 私がうっかり他人の家のブロック塀に、コツンと車を当ててしまったのです。 軽く当たっただけでしたので、車も、塀にも傷はつきませんでした。 そのまま帰ろうとしたら、父は車を降りて、ピンポンを鳴らしてその家の方にお詫びをしていました。 そんな父でした。 料理一本で来ていた父でしたので、経営という経営は出来ずにいました。 1990年代半ば以降、業績が悪化して、だんだん苦しくなっていきました。 私