桜も開花したというのに、夜明け前の東京湾には雪が舞っていた。先月26日午前6時50分、羽田発富山行きANA881便。自衛隊幹部の道から全日空に転職して2年余り。大手航空会社としては初の自衛官出身の女性パイロットだ。副操縦士として機長とともにコックピットに乗り込み、この日が初フライトとなった。 「国益を守る自衛隊機とは違い、民間機には快適性や経済性も求められる。大勢の乗客の命を預かる重責を感じながら操縦桿(かん)を握りました」 悪天候の中、881便は雲の上に出た。その瞬間、まぶしい朝日とともに視界が広がった。不思議と力がみなぎったという。 富士山から南アルプスを経て富山空港までの1時間の飛行。自衛隊での飛行時間は3000時間を超えるベテランの域に達したものの、客室の人命が重くのしかかる。着陸後、全員が安全に降りるまではコックピットからは出られず乗客の笑顔に触れることはできなかったが、満足感と