天才外科医、渡海征司郎はとにかくカッコいい。 ピンチになると、猫背でゆらりとオペ室にやって来て、凄まじい技術で窮地を救う。 「修復するよー」 などと普段は脱力感をただよわせるほど穏やかだが、時に声を荒げて現場をピリッとさせる。 そして過去に負った心の傷が陰となり、彼をより魅力的にしている。 まさに「オペ室の悪魔」と呼ぶにふさわしい。 そういえばかつて私の周りにも、彼と全く同じ特徴を備えた外科医がいた。 同じように猫背でゆったり手術室にやって来て、手術中は穏やかだが突然後輩に声を荒げて怒鳴る。 おかげで彼の前では若手が萎縮し、なかなか上手く手術ができない。 普段はやや根暗で、患者さんへの説明はあまり上手くない。 決して真面目なタイプではなく、空いた時間にはよく居眠りをしている。 渡海と全く同じである。 ところが残念なことに、彼は「陰気」「短気」などと陰口を叩かれ、オペ室ナースには「オペ室の悪