ミネラルを多く含む硬水を噴霧するとカルシウムイオンが減って軟水に近づくことを、岐阜大学教育学部の久保和弘教授(栄養学)と水回り部品を製造する企業TKS(本社岐阜市)のグループが明らかにした。今後数年、硬水を産出する地域が広がる北米の展示会に、霧をつくるノズルのプロトタイプを出品するなどして需要がどこまであるかを探り、実用化の可否を判断したい考えという。 日本の水はほとんどが軟水だが、欧米やアジアでは硬水が多い。洗剤・石けんの泡立ちが悪い、配管内に無機質の垢(あか)がたまって詰まりやすくなる、過剰摂取すると健康リスクが高まるといった不都合がある。このため硬水地域では、アルカリ剤を投入したり膜で濾過したりして軟水に近づけることがある。 久保教授らは以前から、ノズルから噴霧する水に含まれる微細な泡について研究しており、硬水で実験すると白い析出物ができることに気がついた。硬水を加熱して(エネルギー
ガジェット全般、サイエンス、宇宙、音楽、モータースポーツetc... 電気・ネットワーク技術者。実績媒体Engadget日本版, Autoblog日本版, Forbes JAPAN他 ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)のAkos Bogdan氏率いる研究チームは、NASAのチャンドラX線観測衛星とジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を使った観測から、約132億光年もの彼方に超大質量ブラックホールを発見したと発表しました。 このブラックホールは、地球から約35億光年の位置にある、銀河が密集しているAbell 2744と呼ばれるエリアにある、UHZ1と呼ばれる銀河内に発見されました。しかし実際には、UHZ1はAbell 2744のはるか遠い背後、地球から132億光年も離れた場所にあることが、JWSTのデータから示されています。 この遠い銀河からの光と、超巨大ブラックホー
大人でも苦手な人が多い「統計」。学校の授業や会社のプレゼンなどで、スマートに統計分析の結果を披露できれば尊敬されること間違いなし。ここでは、その基本の考え方を学ぶ。 正確な統計を取るための条件を整理する 本稿では、様々な分野で必要になった統計分析の基礎に関して学ぼう。 信頼できる統計を得るために誰でも思い付くことは、偏りのないデータをなるべく多く集めたほうがよい、ということである。 ここで、AかBどちらを支持するかというアンケートを1千人と1万人を対象に行った結果、1千人調査ではAが528人、Bが472人、1万人調査ではAが5103人、Bが4897人という結果になったとする。 この場合、「1千人調査からはAが53%、1万人調査からはAが51%なので、1千人調査からはAが有利と言えるものの、1万人調査からは微妙であると言えるだろう」と思う人達は意外と多い。 ところが「有意水準5%」という「検
サーモンを捕食するサザンレジデントシャチは絶滅の危機に瀕しているが、たとえ飢えているときでも、彼らは自分たちが殺したイルカを食べようとはしない。(PHOTOGRAPH BY BRIAN SKERRY, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 北太平洋東部の定住型シャチのうち、南部に生息するサザンレジデントシャチが、ネズミイルカ(Phocoena phocoena)やイシイルカ(Phocoenoides dalli)をいじめたり殺したりした78件の事例について、集団、性別、年齢などの特徴に基づいて分類され、9月28日付けで学術誌「Marine Mammal Science」に発表された。 論文の筆頭著者は、米ワシントン州フライデーハーバーに拠点を置く非営利団体「ワイルドオルカ」の科学研究主任を務めるデボラ・ジャイルズ氏だ。北米太平洋沿岸のセイリッシュ海における、1962年から20
シマスカンク(写真は米国ニューメキシコ州の野生動物センターで飼育されている個体)には、さまざまな配色や模様を持つものがいる。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC, PHOTO ARK) 米カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の進化行動生態学者テッド・スタンコウィッチ氏は動物の警戒色を研究している。ヤドクガエルやサンゴヘビの鮮やかな体色はその好例だ。北米の大部分に生息するシマスカンクもまた、漆黒の地色に白い筋が背中で2本に分かれながら頭から尾まで続くという特徴的な色彩を持つ。 スタンコウィッチ氏らは2023年9月11日付けで学術誌「Evolution」に、なぜシマスカンクにさまざまな模様が存在するのか、そして、私たち人間はどのような影響を与えているのかを説明する論文を発表した。(参考記事:「模様のない珍しいキリンがまた見つかる、今度
そんなに簡単に生まれるわけがない…!地球外生命を諦観する生物学者たちを唸らせた「宇宙物理学者の挑戦的理論」 著者に聞く第9回(後編)…生命を創ることは難しいが、地球外生命体は存在している? 『宇宙になぜ、生命があるのか』の著者 戸谷 友則 さん 「地球外生命体が宇宙のどこかに存在する可能性は極めて高い」 戸谷友則氏(東京大学大学院理学系研究科天文学専攻教授)はインタビュー前編でそう語った。しかし、その一方で、戸谷氏は生命が発生することの難しさについても言及した。 生命が発生することは困難だが、地球外生命体は存在しているだろう。 一見すると矛盾しているような戸谷氏の主張。しかし、その矛盾を説明しうる理論を戸谷氏は導き出している。 インタビュー後編では、なぜ地球外生命体が存在すると考えられるのか、という点を中心に引き続き戸谷氏に話を聞いた。さらに、インタビューの最後には、研究を通して実現したい
海中を泳いでいたメスのマンタに、後ろから近づいてきたオスがもう少しで触れそうになった。すると突然、メスが弾かれたように前に飛び出し、回転しながら高速で泳ぎ始めた。オスも、あおむけになってキラキラと光る太陽に腹を見せながら、律儀にメスの後を追った。しかし、今度は別の2匹が最初のオスを追い越し、我先にとメスを追い始めた。(参考記事:「動物大図鑑 マンタ」) これは、「クリッターカム」が捉えた数十時間にも及ぶ映像の一部だ。クリッターカムとは、野生動物の体に取り付けてその生態を観察するために、海洋生物学者のグレッグ・マーシャル氏が1986年に考案したカメラだ。 深度と海水温を測るためのセンサーも装備されている。これをマンタの体に取り付けるために、なんとピーナッツバターを接着剤として使った場合もあったという。このカメラのおかげで、人間が近くにいないときにマンタがどのような行動をとっているのかを観察で
イギリス・ケンブリッジ大学の研究チームが、「量子もつれ」と呼ばれる現象を利用することで、量子力学の世界において、25%の確率で過去に起こった事象を未来で変えることができるシミュレーションに成功したと発表しました。 Phys. Rev. Lett. 131, 150202 (2023) - Nonclassical Advantage in Metrology Established via Quantum Simulations of Hypothetical Closed Timelike Curves https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.131.150202 Scientists Successfully Simulate Backward Time Travel with a 25% Chance of
ウガンダのキバレ国立公園のチンパンジー。新たな研究により、チンパンジーはメスが繁殖期を過ぎて長生きする数少ない種の1つであることが確認された。(PHOTOGRAPH BY KEVIN LANGERGRABER, ARIZONA STATE UNIVERSITY) メスが生殖期を過ぎて長生きする動物はとても少ない。閉経後まで長生きすることが知られているヒト以外の動物は、シャチ、コビレゴンドウ、イッカク、シロイルカ、オキゴンドウなど、片手で数えられるほどしかいない。いわば「おばあちゃんクラブ」は少数精鋭なのだ。(参考記事:「シャチが閉経後に長生きするのは「孫のため」」) けれども今回、画期的な研究が行われ、少なくとも1つのチンパンジーの集団が「おばあちゃんクラブ」のメンバーであることが、10月27日付けの学術誌「サイエンス」に発表された。この発見は、ウガンダのキバレ国立公園に生息する野生のチン
【研究発表】都市の熱さで植物は赤く進化する-ヒートアイランドへの急速な適応進化を初めて実証-https://www.tmu.ac.jp/news/topics/36096.html 千葉大学大学院園芸学研究院の深野祐也准教授、東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守航准教授、内田圭助教、東京都立大学大学院理学研究科の立木佑弥助教、かずさDNA研究所植物ゲノム・遺伝学研究室の白澤健太室長、佐藤光彦研究員らの共同研究グループは、都市の高温ストレス(ヒートアイランド)によって、カタバミの葉の色が赤く進化し高温耐性を獲得していることを発見しました。この成果は、ヒートアイランドによって植物が進化していることを明らかにした初めての成果です。今後、温暖化が進んだ世界の生物動態の予測や、高温下で栽培される農産物の開発につながる可能性があります。本研究成果はScience Advancesで2023年10月2
YouTubeに公開された7分足らずの動画に世界が衝撃を受けた。 動画に写っているのは、オンラインゲームをプレーするアメリカ人の男性。 その手元にあるはずのコントローラーが、ない。 代わりとなっているのが頭に取り付けられた装置だ。 脳に埋め込んだ電極で脳波の情報を読み取り、ゲームのキャラクターの動きに変換し操作しているのだ。 脳と機械をつなぎ、“念じた”とおりに動かす。 BMI=ブレイン・マシーン・インターフェースと呼ばれる技術の開発競争が、今、世界で激化している。 (大阪放送局 記者 絹田峻) こちらが世界に衝撃を与えた動画。 動画の男性が来日すると知り合いの研究者から聞き、早速インタビューを申し込んだ。 インタビューが実現したのは、2023年10月。 ネイサン・コープランドさん(37)は、「観光で疲れた」などと言いながら、終始笑顔で取材に応じてくれた。 ネイサンさんは18歳のとき、車を
恐竜の骨で作った彫刻。約5万ドル(約750万円)の値段が付けられていた。今回押収された、米ユタ州の公有地から違法に発掘された化石の1点。(PHOTOGRAPH BY BUREAU OF LAND MANAGEMENT) 米国ユタ州の連邦検察は2023年10月19日、大規模な恐竜化石密輸に関わった罪で4人を起訴したと発表した。 起訴状などによると、米国政府がユタ州に所有する土地から秘密裏に発掘された恐竜などの化石が、展示販売会などで売りさばかれたり、建築資材や宝石と偽って中国に輸出されたりしていた。違法な取引と虚偽の申告は2018年3月から2023年初めまで続いた。 「違法に掘り起こされ、商品に加工されたことによって、数万ポンド(1ポンドは約0.45キログラム)の恐竜の化石が科学的価値を失ってしまいました。未来の世代はもう、これらの化石から科学的探究と驚きを体験することはできません」と、ユタ
気持ちのいい秋に、せっかくなら身体づくりをはじめようと考えているあなた! それなら「自転車」を活用する健康づくりはいかがでしょうか。 「応用生理学」という立場から、自転車と身体の関係を研究している名古屋市立大学の高石鉄雄先生。このたび刊行された『自転車に乗る前に読む本』の中から、身体がかわる自転車活用の極意を紹介します。今回は自転車の「ペダリング」に注目し、回転数と疲労の相関関係を見ていきたいと思います。 自転車競技者、長らくの謎とは スポーツ科学の世界には、「自転車競技の選手は、なぜエネルギー効率が良いとはいえない90〜100回転(ペダルの毎分回転数)で走るのか」という謎がありました。 なぜ、サイクリストは、軽めのギアでの高速回転の走行を好むのでしょうか。 そこで、私たちはサイクリスト(ロードバイクに乗り慣れているトライアスロン競技者を含む)と、高回転に慣れていないノンサイクリスト(一般
金魚鉢の金魚を見つめるペルシャネコ。ナショナル ジオグラフィック1938年11月号より。ネコは遺伝的に、マグロなどのうま味が豊富な食べものを好む傾向があることがわかった。(PHOTOGRAPH BY WILLARD CULVER, NAT GEO IMAGE COLLECTION) イヌは何でも喜んで食べるのに、ネコは選り好みするのはなぜだろう? 苦労してネコに薬を飲ませようとしたことがある人や、庭に敷いたウッドチップをイヌが食べようとするのを見たことがある人なら、そう思ったことがあるはずだ。 科学的に言えば、動物がどんな味を好むのかについては、まだよくわかっていないことが多い。だが、小規模ながらも徐々に研究は進んでおり、その謎の答えが明らかになりつつある。現時点でわかっているのは、どんなことだろうか。(参考記事:「電気刺激で味覚を変える実験の日本人研究者2人にイグ・ノーベル賞」) ネコの
フランスのボーバル動物園で飼育されているオスのジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)。中国には、野生のパンダが約1800頭生息している。(PHOTOGRAPH BY ERIC BACCEGA, NATURE PICTURE LIBRARY) 転がったり、滑ったり、楽しそうに遊んだりして、動物園の来園者を楽しませてくれるジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)。しかし、新たな研究により、飼育されるパンダに潜む問題が明らかになった。 動物園で飼育されているパンダは、本来の生息地とは異なる緯度で生活している場合、野生で生活しているときより活動レベルが下がり、異常行動も示しやすかった。この論文は2023年9月18日付けで学術誌「Frontiers in Psychology」に掲載された。 英国スターリング大学の博士課程の学生で、心理学を専攻し
2023年10月2日、オランダで新型コロナウイルスワクチンの接種を受ける患者。頭痛や悪寒などの強い副反応は不快だが、ワクチンがより強い免疫反応を引き出して将来の感染に備えているサインなのかもしれない。(PHOTOGRAPH BY KOEN VAN WEEL, ANP/REDUX) 新型コロナウイルスワクチンの副反応におびえる人々に朗報だ。最新の研究によれば、強い副反応はワクチン接種後にウイルスと戦う抗体がより多く作られていることを示していて、良いことかもしれないという。論文は査読前の論文を投稿するサーバー「medRxiv」で2023年10月6日に公開された。 「強い症状を報告する人ほど、抗体レベルが高かったのです」と、この研究を率いた米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の臨床心理学者アリク・プレーザー氏は言う。 米ブラウン大学の腫瘍専門医ジェレミー・ワーナー氏は、新型コロナウイルスワクチ
2016年に撮影されたフランス、ボルドーのブドウ畑。ボルドーのブドウ畑は灌漑ではなく降雨による水に依存しているため、気候変動はワインの生産力に直接影響を及ぼすことになる。(PHOTOGRAPH BY NEIL MASSEY, CAMERA PRESS/REDUX9) ワインの専門家たちは、以前から、気候変動はブドウの収穫時期のずれを引き起こし、ワインの品質を低下させ、ブドウの木の成長を阻害する可能性があると警告してきた。けれども今回、乾杯に値する事実が明らかになった。世界有数のワイン産地であるフランスのボルドー地方では、気候変動のおかげでワインがおいしくなっているのだ……今のところは。 2023年10月11日付けで科学誌「iScience」に発表された論文によると、ワイン評論家による70年間のボルドーワインの採点データと、同じ期間の高解像度気象データから、ワインの品質(豊かで力強い味わいな
西暦79年の火山噴火で埋もれたポンペイ近郊邸宅で発掘された、炭化したパピルスの巻物「ヘルクラネウム・パピルス」に記された単語が初めて解読された。巻物の解読コンテスト「ベスビオ火山チャレンジ」の主催者は10月12日、初の単語解読者、ルーク・ファリター氏(21)に4万ドルの賞金を授与すると発表した。 このコンテストは、ケンタッキー大学のブレント・シールズ教授らが2019年に開始した巻物解読研究に端を発するもの。巻物は炭化しており、開こうとすると崩れてしまうため、1700年代に発掘されて以来、ほとんどが開かれずに保管されている。 教授らはまず、粒子加速器で炭化した巻物を3D CTスキャンし、並行して崩れてしまった巻物の断片をスキャンして、それらでデータセットを構築した。チームはこのデータセットでトレーニングした機械学習モデルを使って文字の断片の検出に成功し、解読を加速するため、研究で構築した機械
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