SFグラフィックノベルの傑作。ドローン大戦争の後の人類を支配するセンター社が、集合意識から生みだされた新生命体を密かに絶滅させようと狙う、表に出ない闘いを、主人公の19才の少女ミシェルと、それを密かに追う謎の男が交互に語りながら展開するスケールが大きく緊迫感のある逃走・追跡の物語。しかし日本版は訳者が謎の男の語り部分を強引に少女の言葉として翻訳してしまったために、無駄に難解で、大事な部分が失われた本になってしまった。本来ならリコールものの欠陥だが、それでもまだ面白いところが、画力と言うかこの本の底力。 【ネタバレ+α】 本文中で、黒地に白抜き文字で文章が書かれているページの語り手は、主人公の少女ミシェルではなく、最後まで正体の明かされない謎の男だ。原作はそれを示すため、そのページの絵には常に語り手の男の乗っている赤い車や、男の姿をはっきり描いている(さらに英文版ではこの部分はイタリック体で