日本で暮らす以上、避けることが難しい自然災害。しかし安全が当たり前で死が遠ざかった現代社会では、「自然の脅威」といった言葉も説得力を持ちません。現代人が生きる覚悟や実感を取り戻すには、どうすればいいのか――。養老孟司氏は「二足の草鞋」を履くことを勧めます。本稿は『1日1篇「人生を成功に導く」365人の言葉』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 自然と共存する覚悟が 薄れている現代 東日本大震災が起こり、すさまじい津波に襲われました。その光景を見て、「自然は驚異だ」「自然とは想定外のものだ」などという言葉が氾濫しました。大自然がもつ怖さ。そんな当たり前のことは、今さら言うほどのことでもありません。 「人間がつくったものではないもの」。自然を定義するなら、その一言に尽きます。人間が立ち入ることのないような森。そこに育っている木々。実がなれば鳥たちがやっ