イラスト 小幡彩貴 タイのメコン川沿いの町ナコンパノムへ“世界最重量の淡水魚”と言われるメコンオオナマズを食べに行ったときの話の続き。 なかなか入荷しないと聞いていた大ナマズだが、偶然にも私がレストランを訪れたとき、漁師から届いたところだった。 店のおばさんは「今じゃこんなちっちゃいやつしか捕れないんだよね」と残念そうな顔をするが、いやいや、これだって相当でかい。体長一・二メートル、体重三十キロなのだから。これを七千五百バーツ(当時のレートで約二万二千五百円)で買ったとのこと。 店のシェフが鉈(なた)のような中国包丁で背中にツーッと切れ目を入れると、意外や意外、赤身の肉が現れた。ふつうのナマズは白身肉だ。根本的に種類がちがうのかもしれない。しかも、表皮と肉の間には黄色い脂身がびっしり。「こりゃ美味そうだ」と思わず涎が垂れてくる。 「どんな料理が食べたい?」と訊かれて、私は、“トムヤム”と“