見出しに踊る数字だが、実際に私がその労働環境で働いたのは、編集プロダクション勤務時代に一度、出版社勤務時代に一度ずつである。いつもその働き方をしていたのでは、柔道二段、剣道二段と体力にそこそこ自信のある私も、さすがに持たない。 もっとも、だからと言ってそれ以外の月日は定時で帰れていたかというと、そんなこともない。出版業界はブラック企業の巣窟である。疑う余地のないほどの斜陽産業だが、そういう業界ほど、昨日と同じ儲け方に固執する。沈みつつある船を乗り換えるでも乗り捨てるでもなく、沈まないようにする抗力と沈みながらもなお前進しようとする努力、その双方を現場は強いられるがゆえに、昨日も今日も、そして明日も出版業界で働く人間は忙しい。 大学院を出た後、最初は文筆業で生計を立てながら、やがて編集者として出版業界により深くかかわりながら働くようになった私の経験をベースに、労働者として働きながら、いかにし