日本産ホタテの殻むきなどの加工業務を受刑者の刑務作業に加えよう――。中国による禁輸措置で打撃を受けた国産ホタテの事業者支援として政府が10月に検討した「秘策」は、急ピッチで具体化が進んだが、約2週間で一転断念した。米国など想定するホタテの輸出先には、受刑者の労働による産品を輸入できない制度があったためだ。それならば、なぜ検討したのか。背景を追った。 発端は萩生田氏の一言 話の発端は、自民党の萩生田光一政調会長の一言だった。10月14日の札幌市での講演で、受刑者の刑務作業としてホタテの加工ができないかとの趣旨の発言をしたとされる。 ホタテは、8月の東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を受けて中国が始めた日本産水産物の全面的な輸入停止で大打撃を受けている。 農林水産省によると、中国向けの水産物輸出額(2022年)は国・地域別1位の871億円で、中でもホタテは489億円の重要な品目だ。 ホタテ