「これまで食べられなかったものはないんですか?」という質問をよく受ける。実際、何かを出されて食べられなかったことは一度もないのだが、躊躇したことは何度かある。あろうことか、そのうち二回は日本でのことで、両方とも「本来は食べ物じゃないもの」だった。 最初は学生時代、熊本県のある町でのこと。町役場から洞窟の調査を頼まれ、探検部の仲間とともに訪れて数日滞在した。ある日の夕方、洞窟調査を終えた私たちは町の人たちと脇で焚き火をしながら談笑していた。やがて、暗くなり、焚き火を消したら、そこから炭に混じって黒く焦げたカタツムリが出てきた。私がコンゴでゴリラを食べたというような話をしていたせいだろう、町の人たちが「それ、食いなよ」とけしかけた。あまり気は進まなかったが、ゲテモノ自慢をした手前、食べないわけにはいかなくなり、思い切って殻を割って口に入れた。 味はなんとも微妙。なにしろ焚き火で巻き添いになった