「料理研究家」という職業は不思議だ。レストランで腕を振るうシェフでもなく、大学で論文を書く研究者でもない。 最近ではそういう人もいるが、料理研究家と聞いてまず頭に思い浮かべるのは、テレビで上品な笑みを浮かべながら家庭料理を教えてくれる女性である。 料理研究家とは、いつから登場し、一体どんな存在なのか。これを理解するのに役立つ書籍が『小林カツ代と栗原はるみ―料理研究家とその時代』(阿古真理著、新潮社)だ。2014年に亡くなった小林カツ代や、現在も現役の栗原はるみなどを対比しながら、それぞれの活躍した時代や、求められる資質を分析する「本邦初の料理研究家論」。 同じ著者の「昭和の洋食 平成のカフェ飯 家庭料理の80年」は、レシピ本や料理マンガ、小説など各種メディアの情報から家庭料理の歴史を紐解いた内容だったが、今回はぐっと料理研究家に焦点が絞られている。 昔の料理研究家はセレブリティ