「冷やし中華」らしい「冷やし中華」を求めて――渋谷「喜楽」 日本の夏は「冷やし中華はじめました」の張り紙によって始まる。少なくとも食いしん坊にとってはそういうことになっている(暗黙の了解で)。今年もそろそろ冷やしとくかな〜、という店側のアバウトな判断によって、ぼんやりと夏が始まっていくのがわたしは大好きだ。始まりだけでなく、いつ終わるのかよくわからないのも、夏の気まぐれさを思わせて大変よい。 そんな冷やし中華は、「中華」とは名乗っているものの、日本で生まれた麺料理である。「日式中華」や「街中華」と呼ばれるような、日本で独自発展した中華料理の中でも、元ネタが「ざるそば」な時点で、冷やし中華はかなりネオっていると言える。起源としては、仙台「龍亭」の店主で、「仙台支那料理同業組合」の初代理事長だった四倉義雄と組合の仲間たちが開発した、という説と、神保町「揚子江菜館」の二代目が考案した、という説の