愛知県豊橋市はウズラ卵の年間産出額が約15億円で、全国トップを誇ることで知られる。だが、同市の「うずらの里・内田ファーム」は、全国でも珍しいウズラ肉の専業農家だ。「ミシュランガイド」で星を獲得したレストラン、東京都心にあって日本を代表する高級ホテル……。ウズラ肉を求める飲食店から年2万羽を超す注文が入る。 「転機は、あの一件だった。当時は何が何だか分からなかった」。農場を営む内田貴士さん(41)が振り返るのは8年前の痛恨の事態だ。父の代からウズラの採卵業を手がけていたが、2009年に飼育していたウズラが鳥インフルエンザに感染。全20万羽超が殺処分され、飼育棟は空っぽになった。ウズラは農場の裏手に埋められ、約20人いた従業員は一部を解雇した。 卵を缶詰加工会社に卸していたが、安価な海外産が台頭して商売は苦しかった。そこに惨禍が追い打ちをかけた。本業の収入が途絶えては生活もままならない。「誰も