映画『この世界の片隅に』について – 1面 町山智浩 大ヒットの理由はヒロインの魅力 数百万部の大ベストセラーを、広告代理店とテレビ局が大資本を投入して映画化し、人気タレントを動員して派手に宣伝され、数百のスクリーンで全国一斉公開される。そんな映画が大ヒットする時代に、『この世界の片隅に』は、あらゆる意味で不利でした。 こうの史代さんの原作マンガは文化庁の優秀賞も受賞した傑作でしたが、知名度は低く、最初、大企業はアニメ化に興味を示さなかったので、片渕須直監督は、資金をクラウド・ファンディングによる草の根募金で集めざるを得ませんでした。そのうえ、主役の声優のんさんは事務所とのトラブルでテレビ出演できず、宣伝も劇場数も少ないまま、『この世界の片隅に』はひっそりと公開されました。ところが、評判が評判を呼び、公開規模はどんどん拡大し、各映画賞を独占し、半年近く経った今もロングランされ続けています。