Nooooooooooooo! 野坂昭如逝去か……。掛け値なしの天才、混じりけなしの小説家。追随者なく日本語の荒野を突き進み、我と我らの卑俗を余すところなく活写したうえにそこに何か聖性まで添えてみせた。俺ごときが称揚するまでもない、最も偉大なる日本語の小説家ここに斃る。 かえりみれば野坂昭如、その名前を最初に耳にしたのは「火垂るの墓」、中学生のころにひときわ評判を取ったアニメ映画の原作者ということになりそうなものだがまるで記憶になく、むしろ親父の買ってくる週刊誌に異様に一文の長いコラムが載っていてまるで読み解けずにいれば、戦後民主主義世代の両親言下に「あぁあのウヨク作家」と切って捨てたその小気味よさこそが、この稀代の大作家をいたずらに反戦平和の教条と結びつけずに済んだのだとは後になってわかることだった。先人の紙に記した言葉を追いかけるようになったのは先帝のみまかってより後のこと、この大作家