過激派組織「イスラム国」(IS)が5年前に「建国」を宣言して支配したイラク第2の都市モスル。2年前に解放されるまで、イスラム教を極端に解釈し、処刑や抑圧で住民を恐怖に陥れたISへの市民の嫌悪感は根強い。IS構成員に残された妻や子どもは社会から疎外されながら生きていた。(モスル=高野裕介) モスル市内の雑居ビルの一室。ほおに薄らチークを入れマスカラをつけたハナさん(30)が、携帯電話の電話帳を見せてくれた。匿名で登録しているのは、すべて売春の客だ。 ISに加わった夫は戦闘で死亡したという。モスルがイラク軍などに解放された2017年7月以降、自分がISへの関与を疑われて報復されるのが怖くなった。政府の食料配給は申し込めなかった。知人から金を借りたり、店で食料を少しだけ分けてもらったりして暮らしてきた。 解放から数カ月たったある日…