「感想文」しか書けない自称・評論家にご注意 烏賀陽弘道コラム(17) ミュージシャンのレーティングはどう決める? 新しい年の連載1回目なので、自分自身がどう音楽と向き合う仕事をしているか、という話をしよう。私がふだん音楽の評価を決めていくとき、どんな基準で音楽を観察しているのか。そんな「ウガヤの自己ルール」の公開である。 まず、当たり前の前提を言っておく。音楽や美術、文学といった芸術の「価値」を数値化することはできない。CDや本の「売れ行き」が何枚だ、何冊だ、絵画がいくらで売れた、などという「数値」は芸術作品を「経済の座標軸」に置いたとき、つまり、「商品」あるいは「消費財」としての価値を数字で表現しただけの話であって、それは表現物の価値を評価する幾千とある座標軸のひとつにすぎない。 もしCDを10万枚売った音楽より100万枚売った音楽のほうが「価値が高い」のなら、音楽を換金可能な「消費