山田洋次の、藤沢周平原作の三部作(といっても事後的に三部作にしただけだろうが)と言われる「武士の一分」をDVDで観たが、ひどく疑問が残った。毒見役をしている武士が、藩主の食事に入っていた貝の毒がもとで失明するのだが、これで今後の生活をどうするのか、などと親戚が集まって協議し、妻は夫の上司に身を任せて、禄をそのままにしてもらうようにし、夫はそれを知って妻を離縁するが、実はその上司は何もしておらず、藩主の裁定で身分が守られたと知って、盲目の身で果し合いをする。 だが、毒見役をしていて毒にあたって失明した武士の禄を取り上げる家中などというものがあるだろうか。そんなもの、普通に考えたって、仕事の上での事故なのだから、むしろ褒賞があってしかるべしである。どうやら山田洋次は、徳川時代というのはよほどひどい時代だとでも思っているらしい。 確かに、藤沢の原作にも、それに当たる箇所はあるが、描き方が全然違う