新型コロナウイルスの感染拡大は、医療従事者が必要とするマスクの不足につながり、一般の市民には医療用マスクの買い占めを控えるようにと求められてきた。だが、その要請はこれまで、ほぼ無視されてきたようにみえる。 感染症と公衆衛生が専門の医師であり、エボラウイルスのような特異な病原体の感染の封じ込めや生物戦争における防衛を研究する筆者は、世界保健機関(WHO)の地域事務局、汎米保健機関(PAHO)がカリブ海諸国で行った新型コロナウイルス対策の準備を支援するための活動に参加。4月初めに米国に帰国した。 そのとき空港で見かけたのは、バンダナや手作りのフィルターから医療現場で一般的に使用されるものまで、さまざまな「マスク」を着けた多くの人たちだ。そして、その姿が示していたのは、新型コロナウイルスとその感染を防ぐためのマスクの有効性に関する「根本的な誤解」だった。 医療従事者が利用できるマスクの供給量が少