『ルポ 虐待―大阪二児置き去り死事件』杉山春・著(2013年)ちくま新書 9月4日、ルポライターの杉山春さんの新刊『ルポ 虐待―大阪二児置き去り死事件』(筑摩書房)が刊行されました。2010年の夏、ネグレクトされたうえ、マンションの一室に置き去りにされた3歳のあおいちゃん(仮名)と1歳9カ月の環くん(仮名)の死を通して、幼児虐待や女性の貧困について分析しているルポタージュです。 本書では母親である芽衣さん(仮名)や芽衣さんの父親、元夫とその家族に至るまで、ネグレクトされた幼児2人の周辺にいた様々な人たちについて取り上げられています。同時に、芽衣さんや周囲の人々の育った街や事件の起こった街、ならびに、日本社会全体の変容にまで言及されており、この事件が日本社会全体の歴史から見てどういう位置にあるのか、というマクロの視点でも、事件に対する分析がなされています。非常に読み応えのある一冊で、ぜひ女性
死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人 作者: 池谷孝司,真下周,佐藤秀峰出版社/メーカー: 共同通信社発売日: 2009/10/02メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 14人 クリック: 380回この商品を含むブログ (30件) を見る 内容紹介 「私は生まれてくるべきではなかった」。そう言い残して2009年夏、25歳の若者は死刑になった。 16歳で母親を殺害し、少年院を出た後、再び大阪で姉妹刺殺事件を犯した山地悠紀夫元死刑囚。 反省はしないが、死刑にしてくれていい。開き直った犯罪者の事件が続く。秋葉原の無差別殺傷事件、茨城県土浦市の連続殺傷事件・・・。 彼らは他人と自分の死を実感できていたのか。死刑にするだけでなく、なぜそうなったのか、どうすれば防げるかを考えるべきではないか。そうでないとすぐ次の凶悪犯が生まれるだけだ。 事件を起こした山地悠紀夫死刑囚は少年時代に広汎性発
共同通信社の記者さんたちがお書きになった本「死刑でいいです」を読んだ。 17歳のときに実母を殺害し、更生施設でアスペルガー症候群の診断を受けながらもとくにそれに沿ったケアをされず、そのまま地域生活に移行し、二つ目の殺人事件を起こして死刑になった加害者の話だ。 出所後も福祉的支援を受けることなく、大阪で二人の女性を殺害し、現場に放火し、反省の弁を述べることなく、「死刑でいいです」と言いながら死刑執行された。 加害者に何らかの障害の鑑定が出た場合、鑑定結果を公表してほしくないという風潮も強い中、この本を出版されたことは勇気ある行為だっただろう。 加害者になる環境として「孤立化」というキーワードが心に残った。 発達障害業界内部の先生方は「つらい思いをしてきたから二次障害」という表現を使う。これは正直ぴんと来ないこともある。本当に虐待、イジメに近いことをされてきた人も多いとは思う。でも一方で、筋違
2010年10月17日06:06 カテゴリ書評 田中森一『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』 その2。 割り屋という言葉を、私はこの本で初めて知りました。田中森一の『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』。以前はバブル紳士たちの実態をリアルに伝える本として紹介しましたが、いまは元特捜検事による具体的かつ信憑性にとむ証言としてお勧めしたい一冊です。 反転―闇社会の守護神と呼ばれて (幻冬舎アウトロー文庫) 著者:田中 森一 幻冬舎(2008-06) おすすめ度: 販売元:Amazon.co.jp クチコミを見る 東京と大阪の検察の違いは、こんな風に描かれています。 大事件を手がける意味からすると、東京地検にいたほうが圧倒的にチャンスが多い。大阪には、中央官庁も国会もない。いきおい、事件が小ぶりになりがちなのは否めない。そのため大阪の特捜部時代には、まず中央官庁の出先機関の汚職をつかもうとしていた。
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