雑誌の相次ぐ休刊により、危機と言われて久しいノンフィクション。それが果たしてきた役割すら失われてしまうのだろうか。専修大学教授・武田徹氏と気鋭のノンフィクションライター・石戸諭氏がノンフィクションの過去・現在・未来を論じ合う。 (『中央公論』2023年6月号より抜粋) 相次ぐ雑誌の休刊 石戸 2000年代のノンフィクションを支えてきた『月刊プレイボーイ』や『月刊現代』といった雑誌が休刊し、「ノンフィクション冬の時代」と言われて久しいです。そして今度は、総合週刊誌で最も長い歴史を持つ『週刊朝日』が今年5月末をもって休刊します。書き手としてはまた一つ発表媒体がなくなるわけですが、武田さんは雑誌を主戦場にして執筆されていた時代が長くありますよね。 武田 1980年代の後半から、ビジュアルに力を入れた『DAYS JAPAN』や『マルコポーロ』、『VIEWS』といった雑誌の創刊が重なって、活字メイン
第18回開高健ノンフィクション賞作品『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』(集英社)の文庫版が1月20日に発売された。2018年に亡くなった「異色の登山家」とも称される栗城史多氏を描き、注目を集めた一冊だ。 栗城氏は「夢の共有」というキャッチコピーを掲げて登山の様子を動画配信するなど、型破りな活動を続けて話題を呼んだ。その活動には激しい毀誉褒貶がついて回った。 そんな栗城氏を主人公に据えた本書が文庫化されるにあたって、著者の河野氏が解説文の執筆を頼んだのが、TBS『報道特集』の特任キャスター・金平茂紀氏だった。依頼の背景には何があったのか。そして金平氏は『デス・ゾーン』をどう読んだのか。2月初旬に行われた対談の後編をお届けしたい(構成:朝山実)。 河野 いまは地方にも吉本興業など大手プロダクションが進出して、ローカルの深夜番組も東京と変わらない。これを地方局がありがたがっていてはいけな
第18回開高健ノンフィクション賞作品『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』(集英社)の文庫版が1月20日に発売された。2018年に亡くなった「異色の登山家」とも称される栗城史多氏を描き、注目を集めた一冊だ。 そんな栗城氏を主人公に据えた本書が文庫化されるにあたって、著者の河野氏が解説文の執筆を頼んだのが、TBS「報道特集」の特任キャスター・金平茂紀氏だった。依頼の背景には何があったのか。そして金平氏は『デス・ゾーン』をどう読んだのか。2月初旬に行われた対談の模様を前・後編でお届けしたい(構成:朝山実)。 ━━まず河野さんから『デス・ゾーン』の文庫版解説を、金平さんに依頼された理由をうかがっていいでしょうか? 河野 私は、金平さんがモスクワ特派員だった頃から緊張感のあるリポートをされているのを拝見していて、敬意を持っていたというのが一つです。 1991年8月の軍事クーデター(ソビエト連邦
これが話題になった。 bunshun.jp ブクマもにぎわった。 b.hatena.ne.jp そこにつけた当方のブクマ 直接関係ない話で恐縮だが、石井光太氏の書いたノンフィクションはそもそも恒常的に事実を粉飾してないか?という問いを、先輩ノンフィクション作家の野村進氏が書いてて剣呑→ http://kobe59.blog.fc2.com/blog-entry-360.html https://b.hatena.ne.jp/entry/4723110162390046754/comment/gryphon この話、そんなに広まってないようなので、あらためて引用してシェア。 「海外ものなら、どんなに作り話を入れてもバレっこないとでも思っているのかなあ。この手法を認めてしまうと、誰も海外取材はしなくていいという結論になってしまいますよ。取材困難な箇所は、全部創作で埋めればいいわけだから。こう
登山家の栗城史多さんは、世界最高峰のエベレスト登頂に幾度となく挑戦し、凍傷で手指を9本失い、最後は2018年に滑落死した。栗城さんは入山料だけで数百万円という費用をどのように工面していたのか。本人に取材した河野啓さんの著書『デス・ゾーン』(集英社文庫)よりお届けしよう――。 政財界の要人の名刺は「レアカード」 ヒマラヤは春(4月、5月)か秋(9月、10月)に登るのが一般的である。夏は気温こそ緩むが雨季なので、雪の日や雪崩が多い。冬は気温が下がり、ジェット・ストリームが吹き荒れる。いずれも登山には不向きだ。 必然的に、栗城さんが日本にいるのは夏と冬になる。 栗城さんの事務所は、札幌の中心部から車で15分ほどの好立地にあった。学校の校舎のような横長の形をした古い鉄筋4階建ての2階に入っていた。札幌市がクリエイターやベンチャー企業を支援するために出資した財団法人が管理するビルだった。2DKで家賃
https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/blog/bl/pkEldmVQ6R/bp/pE2YPOaAz9/ 『テロルの決算』『一瞬の夏』『深夜特急』……独自の視点と新しい文体による数々の名作ノンフィクションを送り出してきた作家の沢木耕太郎さん。 この冬、25年の歳月をかけて書き上げたという、9年ぶりのノンフィクションを出版しました。主人公は、沢木さんがそのたたずまいを“理想型”とも表した人物。それはなぜなのか。 2時間近くに及ぶインタビューは、先の見えない時代を生きる私たちに力をくれることばであふれていました。 (聞き手:桑子真帆キャスター) 【関連番組】 コロナ禍の日々 “書くことで旅をしていた” ――新作の『天路の旅人』を読み終わったとき、1つの壮大な旅を達成したように感じました。それと同時に、自分も旅に出たいって思わせていただきました。 沢
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【特別取材班より:この連載のすべてのリンクと画像をご覧になりたい方は、ガジェット通信サーバー上の記事をご覧ください。】 「週刊ポスト」大型連載「化城の人」に無数のパクリが 本連載第4回では、佐野眞一氏による小学館「週刊ポスト」の大型連載「化城(けじょう)の人 池田大作と創価学会の80年」パクリ疑惑についてレポートした。 https://getnews.jp/archives/267742[リンク] 先述のとおり、「化城の人」は佐野氏が抱える、現在進行形の最も大きな連載である(第1部の連載が終了し、現在第2部再開を控えて現在は連載中断中)。 本連載第4回のレポートでは、月刊「パンプキン」編集部によるフォトエッセイ集『創価教育の源流 牧口常三郎』(潮〈うしお〉出版社、2001年11月刊行)からの全10件にわたる剽窃(ひょうせつ)を列挙した。 一見してわかるとおり、言い訳のしようがないザ・パクリ
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著名人や事件などさまざまなテーマを取材し、多くの作品を発表したノンフィクション作家の佐野眞一さんが、26日肺がんのため千葉県内の病院で亡くなりました。75歳でした。 佐野さんは東京都葛飾区出身で早稲田大学を卒業後、出版社での勤務を経て作家となり、1997年に「旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しました。 その後、1997年に起きた事件とその後の裁判をめぐる「東電OL殺人事件」や、「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史」など、さまざまなテーマで取材を続け、数多くの作品を発表してきましたが、出版社によりますとことし6月から入院していたということで26日、肺がんのため千葉県内の病院で亡くなりました。 75歳でした。
「あんな親しげな手紙を送ってくれるのだから、会いに来てくれればよかった」 こう語るのは、島根県在住のジャーナリスト・米本和広氏(71)。犯行直前の山上徹也容疑者(41)が手紙を送っていた人物だ。 〈安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません〉などと記された手紙の存在が明らかになったのは7月17日。読売新聞のスクープだった。山上は安倍晋三元首相を暗殺する前日の7月7日、岡山市内の演説会場に向かう道中で手紙を投函したと見られる。 米本氏が振り返る。 「見つけたのは13日。普段ポストは開けないんですが、その日は開けた。宛名は直筆で差出人はなし。献金の返還請求の合意書のコピーが同封されており、山上君だとわかった。元々その翌日に読売の記者が取材に来る予定だったので、手紙について教えたのです」 『洗脳の楽園』(1997年)や『カルトの子』(2000年)などの著書がある米
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本書の書き出しは穏やかではない。なにしろ京都で名高い縁切り神社の話から始まるのだ。そこは「悪縁」を切ることのできる最強の縁切り神社として知られる。訪れた人は、境内にある巨石が参拝者によって糊付けされた形代(白いお札)でびっしりと覆われているのに圧倒されるだろう。 著者は神社のすぐ近くまで足を運びながら、縁が本当に切れてしまうことにためらいを覚え、結局行くのをやめてしまった。著者はお札にこう書くつもりだったという。 「野口健との縁が切れますように」と。 野口健は1999年、25歳でエベレストの登頂に成功し、七大陸最高峰世界最年少登頂の記録を樹立したアルピニスト。その後は富士山やエベレストの清掃など、環境活動や社会貢献に積極的に取り組んでいる。メディアではこんなふうに紹介されることが多い。講演の依頼は引きも切らず、1本あたり80万円の講演を年間100本近くこなすという。 一方で、ある時期からの
『エクソダス』新潮社刊 第43回 講談社本田靖春ノンフィクション賞の選考会が7月15日15時30分から行われ、フリージャーナリスト村山祐介さんの『エクソダス アメリカ国境の狂気と祈り』(新潮社刊)の受賞が決定しました。 2017年、当時、朝日新聞グローブ記者だった村山さんは「トランプの壁」の取材を始めました。以来、足掛け2年半、文字通り歩き続ける取材で、米・メキシコ国境を目指す移民たちが、メキシコのみならず、中南米各地、さらにはアジア、アフリカからも来ていたことを明らかにします。それは地球規模に展開する「格差」が吹き溜まる現場を世に知らしめることでもありました。 村山さんは移民たちと行動をともにしながら、ジャングルを越え、小舟で荒海を渡り、ギャングが仕切るスラム街にも入りました。自らの内に生じた疑問を一つ一つ解き明かすために足で事実を追い求めた村山さんの行動には、今や失われつつある「記者」
稲泉 連(いないずみ れん、1979年[1][2]2月15日 - )は、日本のノンフィクション作家。 概要[編集] 東京生まれ[3]。高校中退後、大学入学資格検定を経て早稲田大学に1997年入学[1][2]、2002年第二文学部を卒業[1][4]。月刊『文藝春秋』1997年10月号に掲載された『僕が学校を辞めると言った日』により、第59回文藝春秋読者賞受賞[5]。 2005年に『ぼくもいくさに征くのだけれど―竹内浩三の詩と死』で第36回大宅壮一ノンフィクション賞受賞[3][4]。最年少(当時26歳)の受賞者となった[6]。 第21回(1990年)大宅壮一ノンフィクション賞受賞のノンフィクション作家、久田恵は母親であり、親子での受賞は初めてである[7]。 著書[編集] 『僕の高校中退マニュアル』文藝春秋、1998年 『僕らが働く理由、働かない理由、働けない理由』文藝春秋、2001年。文春文庫
目の見えない白鳥さんと アートを見にいく 川内有緒かわうちありお 「白鳥さんと作品を見るとほんとに楽しいよ!」 友人の一言で「全盲の美術鑑賞者」とアートを巡るというユニークな旅が始まった。視覚や記憶の不思議、アートの意味、生きること、障害を持つこと、一緒にいること。そこに白鳥さんの人生、美術鑑賞をする理由などが織り込まれ、壮大で温かい人間の物語が紡がれていく。 受賞の言葉 川内有緒さん 小学生の頃、家の前に小さな書店があり、私はほぼ毎日そこで立ち読みして過ごしていました。今年50歳になりましたが、本という存在は、良い時も苦しい時も私を支え、力を与えてくれました。読むこと。書くこと。本がただそこにあること。家の本棚に。そしてポケットに。 このたび、書店員の方々が選ぶ賞を授かるという望外の出来事に心から感謝しています。今回の本を書くことは、他者との出会いや会話を通じて世界の輪郭を捉え直し、自分
講談社本田靖春ノンフィクション賞を東京新聞記者・片山夏子著『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』が受賞! 7月16日(木)、朝日新聞出版より刊行の東京新聞記者・片山夏子著『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』が、第42回 講談社 本田靖春ノンフィクション賞を受賞しました。(*吉田千亜著『孤塁 双葉郡消防士たちの3.11』(岩波書店)とW受賞です) <受賞コメント> 目に見えぬウイルス新型コロナと世界が闘う中で、東京電力福島第一原発事故から10年目となった今も、作業員たちは目に見えぬ放射線や放射性物質と日々闘い続けています。 コロナ禍は福島第一原発にも影響し、一時は最前線の防護服すら代替品となりました。 それでも「何とかしたい」という思いの作業員たちによって、廃炉に向かって進んでいます。 事故から10年目。そんな年なのに忘れられたかのように報道されない、と
第18回開高健ノンフィクション賞(集英社主催)は19日までに、河野啓さん(57)の「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」に決まった。賞金は300万円。河野さんは愛媛県出身。北海道大卒業
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