1951年、永井明(女性名:明子)に対して行われた日本で最初と思われる「性転換手術」については、その事実は知られているものの、細かい経緯は報告されていない。筆者は、戦後日本のトランスジェンダー(性別越境)に関する社会史的な調査・研究を行ってきたが、その過程で当時の報道記事(新聞・雑誌)の集成と分析から、日本最初の「性転換手術」について、かなり詳しい事情を明らかにすることができた。 なお、外性器の異性化形成手術は、現在では「性別適合手術」と呼ばれているが、本稿では歴史的呼称である「性転換手術」を用いる。 また本稿は、第8回GID研究会(2006年3月19日:福岡)で研究発表した内容をもとに訂正・加筆したものである。 1. 永井明(明子)に関する報道 1952年(昭和27)12月1日、元アメリカ軍兵士ジョージ・ジョルゲンセン2世(女性名:クリスチーヌ)がデンマークで性転換手術を受けて