寄贈された図書が無事に収蔵されず,持ち主に返却されたり,廃棄されたりという事例が,今年(2017年)に入ってから2件大きく報道されている注1)。 1件は,岡山県高梁(たかはし)市で起きた寄贈図書の返却事件。高梁市は,2017年2月,いわゆる「ツタヤ図書館」と称される図書館と書店,カフェなどを併設する複合公共施設がオープンしたことで話題を呼んだ。 2006年,高野山大学名誉教授 藤森賢一さん(2005年逝去)の遺族が,藤森さんの蔵書約1万6,000冊を高梁市教育委員会に寄贈した。この図書には古典・国文学・外国文学の他,絶版になった哲学・仏教の専門書,高梁市の歴史に関する書籍が含まれていた注2)。 近年,高梁市は,天守(天和年間(1681~1684年)造設)が現存する唯一の山城である備中松山城でよく知られている。同城は,天守現存の山城の中で日本一標高の高い場所にある。藤森さんの蔵書には,江戸時