精神病床のある全国の病院で50年以上入院する精神疾患の患者数が、2017年6月末時点で少なくとも1773人に達することが毎日新聞の調査で判明した。半世紀にわたり継続入院している患者数について公的な統計は取られていない。厚生労働省は患者の地域移行を掲げ削減を目指すが、今も病院に収容され人生の大半を過ごす人たちが数多くいる実態が明らかになった。 国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)が47都道府県・20政令市を通じ、民間を含め精神病床のある病院から毎年6月末時点の患者に関する情報提供を受けていることから、毎日新聞は各自治体に対し、センターに提出した資料を情報公開請求したほか、担当部署を取材。全国の精神病床を持つ病院の97・7%に相当する1588病院について、1967年6月以前に入院した患者の人数を確認した。
日本には他の先進国と比べて突出して多くの精神病床があり、専門家は「病床削減が入院長期化の抑制になる」と指摘している。 厚生労働省によると、日本の精神病床は2016年10月時点で33万4258床。経済協力開発機構(OECD)のまとめによると、人口1000人当たり2.63床で、OECDの加盟36カ国で最多だ。各国で統計の取り方が異なっているものの、2番目に多いベルギー(1.37床)の2倍近くに達している。 今回明らかになった入院期間50年以上の1773人の大半は、1950年代後半から60年代中ごろ病院に入った患者だ。橋本明・愛知県立大教授(精神医療史)は「病院増加で『収容一辺倒』の時期に入った人が長期化している」と言う。戦前は病院不足の中、精神病者監護法(1900年施行)で患者を自宅に閉じ込める私宅監置が認められていたが、50年の同法廃止と精神衛生法の施行で私宅監置が禁じられ、その後に病床数は
全国の精神病床のある病院に、1700人を超える患者が半世紀以上にわたって入院している実態が明らかになった。このうちの一人、鹿児島市の病院に55年間入る女性(80)が毎日新聞の取材に応じた。統合失調症を患い25歳で入院。両親らは亡くなり、今は身寄りもない。「退院してもおるところがない」。力なくつぶやいた。 ドアが施錠された閉鎖病棟の3階。15畳ほどの8人部屋の奥で、女性はベッドに横たわっていた。青のTシャツにカーキ色のズボン姿。窓からは光が差し込むが、外へ出られないよう金属製の囲いが設けられている。
厚生労働省は企業などが労働者の心理的な負担を把握するストレスチェックの実施者に、歯科医師と公認心理師を追加した。従来は医師と保健師、必要な研修を修了した看護師と精神保健福祉士の4職種だった。職種を広げ、企業がストレスチェックを実施しやすい環境を整える。厚労省は今月、労働安全衛生法に基づく省令を改正した。労働者の健康管理などに関する研修を受ければ、歯
各務原市の蘇原第二小2年の福田こまちさん(7)=同市蘇原旭町=はこの夏休み、母かすみさん(31)と、小児がんや白血病などで髪の毛を失った子どもに人毛のかつらを寄付する「ヘアドネーション」に協力した。多くの人に知ってもらおうと、自分の経験を自由研究としてまとめた。 こまちさんがヘアドネーションを知ったのは、二〇一六年十月の中日新聞の記事「がんの子に私の髪あげる」で、美濃市の藤吉胡歩(こあ)さん(当時小学一年)が髪の毛を寄付した記事を読んだことがきっかけだった。「私も病気の子のために寄付しよう」と決意したこまちさん。お母さんにも一緒にやろうと声をかけた。かすみさんは「こんなに考えてるなんてすごいなと思って、一緒にやることにした」と振り返る。
死を目前にした終末期のがん患者らを精神的に支えようと、医療現場に僧侶が入る「仏教緩和ケア」が日本と台湾で注目されている。医師や看護師に代わって聖職者が患者の苦悩を和らげるケアはキリスト教に由来するホスピスで行われてきたが、日台では、自国民になじみの深い仏教精神の導入を模索。台湾はその先進地域とされ、日本の医療・宗教関係者が視察や研修に訪れているという。その視察に同行し、意義や今後の取り組みの行方を探った。(小野木康雄) 僧侶が常駐する病棟 「ありがとう。うれしいよ」。ベッドに身を横たえた台湾人の男性(86)は日本から来た僧侶の手を握り返すと、戦時中に学んだというよどみない日本語で礼を言った。 今年1月、台北市中心部にある台湾大付属病院6階の緩和ケア病棟。男性は膵臓(すいぞう)がんで余命わずかと診断されていて起き上がれなかったが、日本統治下で過ごした少年時代を懐かしんだのか、軍艦マーチや桃太
1978年に施行された法律は「バザーリア法」と呼ばれる。閉鎖病棟での強制入院が当たり前だった精神医療現場を改革したフランコ・バザーリア(1924~80)にちなむ。 バザーリア法憲法で保障された市民権に基づき、精神科の患者は自分の意思で医療を選ぶ権利があると規定。精神科病院の新設を禁止した。同年には実務を定めた別の法律も成立し、「治安維持」のための強制入院から、地域サービスによる医療に移行した。 バザーリアは「危険な存在」として隔離されてきた患者と対等に向き合わない限り病気は治らないと考えた。病院を開放し、患者の自由意思による医療を導入。精神科病院長として赴任した北部トリエステで病院の廃止を宣言した。 同法ではバザーリアの改革をもとに、患者が病院外で治療や必要なサービスを受ける仕組みが定められた。 トリエステには患者の一時宿泊用施設が4カ所ある。その一つ、海岸に近い高級ホテルに隣接する施設は
厚生労働省は31日、2017年にトラックやバスなどの運転手を雇う事業所の8割超で長時間労働などの労働基準法違反があったと発表した。働き方改革関連法で来年4月に始まる「残業時間の罰則つき上限規制」では、自動車運転業務は適用が5年間猶予されるが、長時間労働が広く行われている実態が改めて浮き彫りになった。 全国の労働基準監督署や労働局が昨年、監督指導した計5436事業所のうち、84・0%の4564事業所で法違反が見つかった。61件は、悪質な違反だったとして送検した。 違反の中身は、長時間労働などの労働時間に関するものが最も多く58・2%。自動車運転手には、長時間労働を是正するために総拘束時間や休息期間などを定めた改善基準告示があるが、この違反も64・7%で見つかった。
上智大学大学院・総合人間科学研究科 博士前期課程 社会学専攻修了。世論調査機関、総合マーケティングリサーチファームを経て現職。主な研究領域は理論社会学・情報社会論・アルバイト・パート領域のマネジメント・長時間労働問題など。主な著作に『残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?』(中原淳との共著・光文社)『会社人生を後悔しない 40代からの仕事術』(石山恒貴との共著・ダイヤモンド社)など。 DOL特別レポート 内外の政治や経済、産業、社会問題に及ぶ幅広いテーマを斬新な視点で分析する、取材レポートおよび識者・専門家による特別寄稿。 バックナンバー一覧 日本企業では「長時間労働をやめよう」というスローガンがずっと叫ばれてきた。だが、残業問題はなかなかなくならない。職場で残業が発生するメカニズムを分析する(写真はイメージです) Photo:PIXTA 働き方改革でも解消できない 「残業発生
京都の大学を卒業し、20年以上引きこもった経験を持つ女性(46)がこの春、初めて人と向き合う仕事を始めた。新聞の集金に購読者宅を回る。決して考えられなかった「人に話しかける」仕事。緊張で手が震え、おつりを落としてしまうこともあるが、少しずつ手応えをつかんでいる。 「こんにちは」「今日は良い天気ですね」。お客さんの家に向かう途中、女性は自転車をこぎながら、ずっと「一人でぶつぶつと」発声練習をする。少しでも自然にお客さんと会話が始められるようにするためだ。自分の緊張を和らげる工夫でもある。 家に着いてもすぐにインターホンは押さない。電卓を取り出して実際にキーをたたき、おつりを入れたケースの小銭の位置を確認する。苦手なおつりの受け渡しのシミュレーションだ。「どうしてもお客さんの前で計算すると手が固まってしまうから」。準備体操のようにグー、パーを繰り返し作って手をほぐした後、お客さんと向き合う。
「怖さ知らない」=消える金、スロットで指変色-ギャンブル依存に懸念・カジノ法 2018年07月20日22時04分 ギャンブル依存症について語るNPO法人代表の町田政明さん=18日、横浜市 カジノを中核とする統合型リゾート(IR)実施法が成立した。ギャンブル依存症患者の家族や支援団体からは「回復困難な病気」とカジノ解禁に伴う依存症患者の増加などを懸念する声が上がる。 【図解】カジノ法のポイント 「同じ苦しみを受ける人が増えるだけでは」。神奈川県に住む60代の女性は、30代の息子が19歳だった頃、異変に気付いた。居間の引き出しに入れた5万円を発端に自宅で現金が消えていく。問いただしても息子は盗んだと認めない。車の免許取得費用などを口実に金をせびられ、100万円以上を手渡した。 ある時、息子の指先が黒く変色しているのが目に留まった。スロット機に入れるメダルの汚れだった。依存症と分かってからは治療
統合失調症などの精神疾患にかかった初期の段階で、治療に加えて手厚い生活支援をすることで、症状が落ち着いたまま過ごせる確率を大幅に高められることが、東京都医学総合研究所などの研究でわかった。英国などで取り組みが進む手法で、日本でも今後、広がる可能性がある。 この手法は「初期包括支援サービス」と呼ばれ、治療にあたる医師とは別に、看護師や精神保健福祉士といったスタッフが「ケースマネジャー」となって患者や家族のケアを担当。家庭を訪問して患者の困っていることを聞いたり、学校や職場を一緒に訪問して復学や復職を支援したりする。 研究には都立松沢病院や東京大病院などが参加。統合失調症や双極性障害を発症した77人(15~35歳)のうち40人にこの手法を、37人には外来受診を中心とした通常の治療を受けてもらい、1年半後の様子を比べた。 すると、目立った症状がなく落ち着いた状態が半年以上続く「寛解」と判断できた
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