ポンペイで出土した1世紀のモザイク。地中海の豊かな海産物が描かれている。ナポリの国立考古学博物館所蔵。ローマで人気の高かった調味料ガルムには、主要な材料としてさまざまな種類の魚が使われていた。(SCALA, FLORENCE) 西暦1世紀が終わる頃、裕福なローマ人が開く宴には、どんな料理が並んでいたのだろうか。一皿目はおそらくガルム味の豚で、次はガルム味の魚だろう。そして料理と一緒に供されるワインにも、やはりガルムが入っていたはずだ。 古代ローマの料理にこれほど多用されていた調味料ガルム(garum)とは、いったいどんなものだったのか。現代の調味料で最もガルムに近いと思われるのは、東南アジア料理の定番である、発酵させた魚と塩から作る液体状の魚醤(ぎょしょう)だ。現代の魚醤と同じく、ローマのガルムも発酵させた魚(具体的には内臓)と塩から作られていた。ローマ人はこれをそのまま味付けに使うほか、