序 加地伸行氏の著『漢文法基礎:本当にわかる漢文入門』(以下「本書」)は、当初二畳庵主人の筆名で受験指導大手Z会の機関誌に連載され、1977年に増進会出版社から単行された『漢文法基礎』に基づいて、2010年10月に講談社学術文庫の一冊として復刊された漢文の指南書である。本稿は、私の手元にある本(2012年4月第10刷)に基づいて記述している。 私は教師業を始めた2012年ころに、学生に推奨できる手ごろな指南書を探すなかで、多くの大学の漢文講読の授業のシラバスに参考図書として挙げられているのを見て、本書を入手して読みはじめたが、その内容に疑問を覚えるところがあった。以来、私は自信をもって学生に本書を推奨することができなかったが、2021年現在、本書はやはり多くの大学のシラバスに参考図書として挙げられている。 そのような状況からして、私が推奨せずとも、学生が本書を読んで知識を得ている可能性があ