「知事抹殺-つくられた福島県汚職事件」 佐藤栄佐久著 正義なき司法の闇語る これはスターリン独裁下のモスクワの出来事ではないのか―この本を手に取った読者はそんな錯覚に陥るだろう。凍てつく収容所列島でなければかかる不条理は起きようはずがない、と誰しも考えるはずだ。それゆえ一般の書評は、本書に書かれた事実を受け入れることに臆病にみえる。収賄事件に手を染めた有力知事の自己弁護ではという疑いを拭いきれないからだろう。 だが一審と14日に下された二審の判決文こそが、本書の供述を見事に裏書きしている。正義の名において公正に裁くべき裁判所は、ひとたび起訴された事件の99.9パーセントが有罪となる既成事実の前に屈伏している。果たして東京地裁も高裁も量刑を判決毎に軽くしたものの、被告を有罪として検察当局の顔を立てている。 その一方で、厳罰に処すべき知事の重大犯罪にも関わらず、執行猶予をつけて、追徴金も取らな