日本近現代史を専門とする米コロンビア大学のキャロル・グラック教授(歴史学)。『戦争の記憶 コロンビア大学特別講義―学生との対話―』(講談社現代新書)には、グラック教授がコロンビア大学で多様な学生たちと「戦争の記憶」について対話をした全4回の講義と、書きおろしコラムを収録している。 評価や単位認定の対象にならない対話式の特別講義には、コロンビア大の学生11人~14人が参加した。育った場所が日本、韓国、中国、インドネシア、カナダ、アメリカ各地と国際性に富んだ彼らが、一人ひとりの視点から「戦争の記憶」を語る。そこで浮かび上がるのは、各国それぞれ違う、戦争の記憶の「作られ方」だ。 本作の発売にあたり、3回目の講義、「慰安婦の記憶」を3回にわたって全文掲載する。長く語られなかった慰安婦問題が90年代にアジアで噴出したのはなぜなのか。グラック教授が学生たちとの対話を通してあぶり出す、私たちの知らなかっ