STAP事件の中心人物、小保方晴子氏の手記についての批評はいくつか出ているが、そもそも内容に触れていなかったり、小保方氏の主張をかいつまむ解説に終わっているものがほとんどのようだ。これでは、同事件の結末・社会的影響および社会による小保方氏への処遇の経緯という3つの観点からは十分とはいえない。 小保方氏手記の一面は、彼女の立場から見たSTAP事件の歴史である。この側面において同書は、関係する他の人々・機関との係争点について彼女の主張を伝えるものである。しかしその多くは部外者にとってはそれが真か偽かを判断することは不可能であり、私自身このような点に興味もないし、またこの側面が同書の重要性でもないと考えている。 私の目から見て小保方氏の手記が重要である部分は、それが彼女の科学者としての一生について語っているところである。事実、同書は、次の一文から始まる:「あの日に戻れるよ、と神様に言われたら、私