かつての原発の建設候補地(右奥)を背に当時を振り返る濱一己さん=和歌山県日高町で2011年5月23日、山下撮影 ◇だまされた国民の責任も問う 福島第1原発の事故を、かつて原発誘致に翻弄(ほんろう)された人々はどんな思いで見ているだろうか。私が勤務する和歌山は近い将来、大地震が予想されている。かつて和歌山でも誘致の是非をめぐっていくつもの町が揺れたが、京都大学の研究者らの助けもあり、ここに原発はない。「危険な原発はいらない」。理由は素朴であり、明快だ。 ◇誘致が浮上し、親類も賛否二分 和歌山県で特筆すべきは日高町と旧日置川町(現白浜町)の誘致拒否だろう。日高町では67年、当時の町長が原発構想を表明して以来、この問題がくすぶった。関西電力は88年、設置に向けた調査に伴う漁業補償金など約7億円を地元漁協に提示。漁協内は兄弟、親戚で賛否が割れ、結婚式、葬式、漁船の進水式に出ないなど人間関係がずたず