サーフィンをさかんにする人は納豆アレルギーになりやすいとする調査結果を、横浜市立大付属病院の猪又直子准教授(皮膚科)らがまとめ、日本アレルギー学会の雑誌に発表した。サーファーに食物アレルギーをもたらす原因が、海中に潜んでいた。 納豆アレルギーは、食べてすぐに症状が起きやすい一般的な食物アレルギーと違い、じんましんや息苦しさといった症状が食べて半日くらいたってから起こるのが特徴という。重症になりやすく、何が原因かがわかりにくかった。 猪又さんは、病院で受診して納豆アレルギーとみられた患者の経緯を調べるうち、なぜかサーフィン経験者が多く、しかもサーファーに人気の神奈川・湘南と近隣の住民が多いことに気付き、研究を始めた。 2015年11月から16年12月にかけて、食物アレルギーと診断された140人について調べた。納豆アレルギーだった13人のうち、11人がサーフィン経験者で、1年間にサーフィンをす
小林和也 フィールド科学教育研究センター講師は、性淘汰のうち特に「性的嫌がらせ」(生まれてくる子供の数が減ってしまうかわりに競争相手よりも自分の子供の割合を高める性質)が、生物多様性を維持している可能性を理論的に示し、シミュレーションによってこの理論が上手く機能することを示しました。なお、本研究における「性的嫌がらせ」とは、自然界の繁殖行動上の現象を示す生態学の用語であり、社会問題としての「性的嫌がらせ」(セクシュアル・ハラスメント、セクハラ)とは一切関係ありません。 本研究成果は、2018年11月14日に英国の国際学術誌「Journal of Ecology」にオンライン掲載されました。 自然界には多種多様な生き物がいますが、それらの生き物の特徴的な色や形の多くは繁殖に関わる性質です。特に種類を見分けるのに役立つ性質、例えば植物の花の形や鳥の鳴き声は、まさに生物多様性の中心的存在です。そ
1.はじめに 2018年8月2日、大阪市の吉村洋文市長が、文部科学省が実施する全国学力・学習状況調査(以下、「全国学テ」と表記)の数値目標を市として設定し、達成状況に応じて教員の手当を増減させる人事評価の導入を検討すると発表したことが話題になっている。 そこで本稿では、改めて、学力の獲得がいかに子どもの家庭背景によって「根深く」左右されているのかについてデータを示していく。そして読者には、データを見たうえで、こうした教育への介入が適切な方向であるかどうかについて考えるきっかけにしていただければ幸いである。 2.全国学テによる学力格差の実態 文部科学省が全国学テを本格的に毎年実施するようになったのは平成19年度からである。この調査の主たる目的は、「義務教育の目標の実現状況の評価と検証」としているため、児童生徒の家庭環境についての情報収集は、基本的にはほとんど行われていない。しかし、平成25年
自閉スペクトラム症(ASD)と統合失調症の発症メカニズムには、少なくとも遺伝的基盤において、何らかのオーバーラップ(重複)が存在するという事実を、名古屋大学などの研究グループが明らかにした。 【こちらも】NCNP、自閉症スペクトラムの聴覚過敏性と活動動態との関連性を明らかに 研究に参加したのは、名古屋大学大学院医学系研究科精神医学の尾崎紀夫教授、同大高等研究院の久島周特任助教ら、日本医療研究開発機構ほかの国内の研究機関。 ASDと統合失調症は、少なくともこんにちの精神科診断学においては、まったく異なる疾患概念である。 統合失調症は古くから知られた精神病の一種で、幻覚や妄想などの陽性症状、意欲低下などの陰性症状、認知機能の低下などの主症状をもつ。有病率は世界のどの社会どの文化圏においても約1%とされ、日本だけで約80万人の認知患者数がある。 いっぽう、自閉スペクトラム症(ASD)は、発達障害
<はじめに> 明仁天皇陛下を筆頭著者とする皇居のタヌキの食性に関する論文(英文)が公表された。このことが報じられてから、複数の人から「タヌキの食性を調べるってどういう意味があるんですか」とか「新種発見とか絶滅危惧種ならわかるんですが、タヌキって珍しくないんじゃないですか」といった質問をもらった。それは私自身に対する質問でもあるような気がした。多くの人がこの論文に興味を持ちながら、学術論文であるからと敬遠して目にすることがないのは残念なことだ。そこで、タヌキの食性を調べてきた者としてこの論文の解説と感想を記してみたい。 <動物の食性を調べること> タヌキの食性、つまり「何を食べているか」を調べることはタヌキに関する生物学のひとつの項目である。分類学、形態学、生物地理学、行動学など、それぞれの分野についてタヌキで調べる価値がある。食性解明は、生物学の類型でいえば生態学の項目のひとつといえる。調
多くの人を苦しませている「がん」の治療でまた新たな成果が報告されています。スタンフォード大学の研究チームは、2つの免疫系刺激物質をマウスの腫瘍に直接注入することで、その部位だけでなく全身に分散していた腫瘍までをも消滅させることができたと発表しています。 Cancer ‘vaccine’ eliminates tumors in mice | News Center | Stanford Medicine https://med.stanford.edu/news/all-news/2018/01/cancer-vaccine-eliminates-tumors-in-mice.html がん治療の際に用いられることが多い「抗がん剤」には副作用が多くみられるため、一定のリスクが伴うといわれています。しかし今回、スタンフォード大学の研究チームが開発した方法によると、2種類のごく少量の薬剤を腫瘍
出生前に胎内で浴びる男性ホルモンが多いほど、女性の月経前症状が重くなる可能性があることが、和歌山県立医科大の研究でわかった。金桶吉起(よしき)教授=神経生理学=や学生らでつくる研究チームが、今年9月にスイスの学術誌で発表した。 月経前症状は、腹痛や頭痛、イライラなど月経前の3~10日間続く様々な身体的・精神的症状のこと。成人女性の9割以上が経験しているといわれ、治療が必要なほど重い場合もある。症状の程度は人によって様々だが、なぜ症状の重さに個人差があるのかが分かっていなかった。 研究チームは「出生前に浴びた性ホルモンが、症状の重さに影響しているのではないか」と仮説を立て、性ホルモン量の推定に使われる右手の薬指と人さし指の長さの比率(指比)に着目した。和歌山市内の女子大学生403人の指比を調べ、症状に関するアンケートを実施した。 その結果、右手の薬指が人さし指に比べて長いほど、諸症状が重くな
7月25~26日に開催された「THE NEW CONTEXT CONFERENCE」ではバイオテクノロジーとブロックチェーンがテーマに掲げられた。ホストを務めた伊藤穰一は、そのキーノートで「バイオに注目すべき理由」を懇々と語った。 僕がMITメディアラボに加わった5年少し前は、ちょうどバイオテクノロジーの研究をしている教授が初めてメディアラボに入ってきた頃で、それからこの分野の重要度が増してきました。 メディアラボの創設者であるニコラス・ネグロポンテは今年、「バイオ・イズ・ニュー・デジタル」と宣言しています。彼は1980年代にデジタルの未来に関する話をして、90年代には新聞がインターネットで流通するようになるという予測を口にし、当時はバカにされていました。 僕たちも、90年代からずっとITやコンピュータ関係の会社だけじゃなくて、みんながIT戦略、インターネット戦略を持たなければいけないと言
鳥の中でも頭がいいことで知られるワタリガラスが、目の前にないエサを得るために道具を用意するなど、将来を見越した行動をすることがわかった。チンパンジーなど一部の類人猿にしかできないとみられていた能力で、人間では4歳児以上に相当するとみられる。知能の進化を知る上で重要な成果という。 スウェーデン・ルンド大の研究チームが14日付の米科学誌サイエンスに論文を発表した。研究チームは、ワタリガラス計5羽を訓練し、エサ箱に特定の小石を入れるとふたが開いて中身がもらえることやペットボトルのふたを取ってきて実験者に渡すとエサがもらえることなどを学習させた。 その後、カラスをエサ箱から遠ざけて、小石を含む四つの小道具が入った容器から好きな一つを選ばせた上で、15分後と17時間後に再び箱に近づけた。小石以外の小道具ではふたは開かない仕組み。カラスはほとんどの場合で正しく小石を選び、15分後に約8割、17時間後に
海洋研究開発機構(神奈川県横須賀市)の地球深部探査船「ちきゅう」が2012年に八戸沖の海底下から取り出した地層から、約2千万年前に陸地と一緒に海に沈んだとみられる菌類が採取されたことが29日、同機構への取材で分かった。69の菌類が見つかり、このうち「スエヒロタケ」の一種を培養すると子実体(キノコ)を形成した。人類の誕生以前の菌類であり、現代と比較することで人の活動が地球の生命進化に与えた影響などを知る手掛かりとなる可能性がある。 菌類はアクレモニウムやスエヒロタケ、アオカビなどで、一般にはカビやキノコとして知られる。古代の森林や湿地に生息していた菌類の胞子が海底下で保存され、研究室での培養でよみがえったとみられる。 掘削調査は日本や中国、ドイツなどの研究機関が参加する国際チームが12年7~9月に八戸沖80キロメートルで実施し、海底下約2500メートルまでの古い地層を取り出した。その結果、
アフリカの草原を毎年、大移動するヌーの群れ。その大量溺死が、タンザニアとケニアを隔てるマラ川の貴重な栄養源になっていることが判明、学術誌「米国科学アカデミー紀要」に発表された。 大移動の意外な脅威 ヌーは群れをなし、タンザニアとケニアにまたがるサバンナを、巨大な円を描くようにして移動する。その数は100万頭以上、距離は1600キロに達し、行く手にはワニやライオンといった捕食者たちが待ち構えている。(参考記事:「動物大図鑑 ヌー」) しかし、陸上を移動するヌーにとって、意外にも大きな脅威となっているのが溺死。大挙してマラ川を渡る際、多くが流れにさらわれて命を落とすのだ。 毎年、100万頭以上のヌーが円を描くように東アフリカの草原を大移動する。その際、数千頭のヌーがマラ川を渡りきれずに命を落とす。(PHOTOGRAPH BY NORBERT WU, MINDEN PICTURES, NATIO
ほぼ骨だけになったヒトの死体を食べていたところ、こちらに気づいて肋骨をくわえたまま顔を上げたオジロジカ。(PHOTOGRAPH COURTESY LAUREN A. MECKEL/ACADEMIA) 野外でヒトの死体がどのように腐敗していくのかを研究していた法医学者が意外な光景に出くわした。人骨をかじるオジロジカ(Odocoileus virginianu)だ。(参考記事:「動物大図鑑 オジロジカ」) 腐敗の過程を研究する施設は「死体農場」と呼ばれ、どんな動物が死体に群がってくるのかも研究対象になっている。(参考記事:「真犯人を追う 科学捜査」) よく見かけるのは、キツネ、ヒメコンドル、アライグマなど。米テキサス州サンマルコスにある法医人類学研究所では、他にも死体を食べにやってくる動物がいるかどうかを観察するため、カメラを仕掛けた。すると、予期していた通り興味深い発見があった。(参考記事:
レジ袋の上にのせられたガの幼虫。スペイン科学研究高等会議が公開(2017年4月17日公開)。(c)AFP/CSIC /CESAR HERNANDEZ 【4月25日 AFP】ふだんは釣り餌として養殖されているガの幼虫が、耐久性の高いプラスチックを食べることを発見したとの研究論文が24日、発表された。世界的な問題となっているレジ袋などのプラスチックごみによる環境問題への対策に、この幼虫が一助となる可能性があるという。 論文は、米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された。共同執筆者の英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)のパオロ・ボンベーリ(Paolo Bombelli)教授は、「今回の発見は、ごみ処理場や海洋に蓄積しているポリエチレン製のプラスチックごみ除去に寄与する重要な手段となる可能性がある」としている。 レジ袋などに使われる
世界で初めて確認された蛍光を発するブチアマガエル。アルゼンチン国家科学技術研究委員会(CONICET)とアルゼンチン国立自然科学博物館の研究チームが提供(2017年3月17日提供)。(c)AFP/MACN-CONICET/Taboada FAIVOVICH 【3月17日 AFP】世界で初めて、蛍光を発するカエルがアルゼンチンで発見された。アルゼンチン国立自然科学博物館(Museo Argentino de Ciencias Naturales)の研究チームが16日、AFPに語ったところによると、南米に多い樹上性カエルの色素に関する他の研究を行っている際にほぼ偶然発見されたという。 研究チームの一員、カルロス・タボアダ(Carlos Taboada)氏によれば「世界初の蛍光カエルの確認例」となったブチアマガエル(学名:Hypsiboas punctatus)の体色は、通常の光の下では黄みがか
社会問題に対して保守的な人は、リベラルな人に比べて危機を煽るウソニュースを信じやすいという研究結果が発表されました。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を中心とした研究で明らかにされています。 UCLAが研究で明らかに 調査は2015年と2016の2回に分けて行われ、与えられた16の文章をそれぞれウソか本当か、自信の度合いとともに回答してもらいました。文章は「空腹時の運動はよりカロリーが消費される」など、“利益”に関するものが半分、「2011年9月11日以降、米に対するテロリストの攻撃は増加している」などの“危機”に関するものが半分用意されていました。そのうち14項目がウソ情報で、本当の情報は2項目のみ。同時に回答者の政治的な偏りについても調査しています。 大統領選挙でも話題になったウソニュース 結果を見てみると、利益についての文章では、保守とリベラルで本当かウソかの判断に違いはあ
今回発見した現象は、環境変化を経験した個体が子孫に対して適応力を授けるという、種の生存戦略の一つである可能性が考えられます。また本研究成果は、ブラックボックスが多かった「獲得形質の遺伝」現象のメカニズムについて、組織間コミュニケーションを介したエピジェネティック制御という新規の枠組みを提示するものであり、当該分野のさらなる発展に寄与することが期待されます。 概要 生物学では長らく、後天的に獲得した形質は遺伝しないと考えられていました。ところが近年になって、その通説を覆すような事象がいくつか報告されるようになりました。例えば、高カロリー食により肥満になった父ラットから生まれた娘ラットが、通常食で育ったにもかかわらず糖尿病の症状を示すという報告が挙げられます。このように、親が生育した環境によって子供の表現型が変化を受ける可能性が示唆されているものの、それがどのようなメカニズムで生じるのかについ
Inc.:集中力、高度な思考力、認知能力といった脳の機能を高めるには、頭脳戦のチェスやランニング、ドリブル、パスという3つの動きをマルチタスキングするサッカーのようなスポーツが最適だと思われるかもしれません(現に、世界最高のチェスプレーヤーはどちらの効果も認めています)。 しかしランニングに関しては、頭を使わない退屈な反復運動であるような感じがして、複雑な意思決定をしたり脳が人並以上になることとは関係ないように見えます。ところが、最近の研究で意外なことがわかりました。 アリゾナ大学の研究チームが、長距離走競技ランナーたちの脳とエクササイズをしない人たちの脳を比較したところ、ランナーの脳は「計画性、抑制力、観察力、注意の切り替え、マルチタスキング、運動制御などの認知機能に関連する領域」が大変活発であることがわかりました。この研究結果は『Frontiers in Human Neuroscie
(上)特殊カメラで撮影した、ロードバイクでの視線の動き(赤線)。路面とその前方の縦方向に偏っている (下)軽快車での視線の動き(同)。縦、左右とも広く見える=いずれも愛知県蒲郡市の愛知工科大で(小塚教授提供) 速度が出るロードバイク型の自転車に乗っている時の周囲の見え方は、視線が下向きになるなど車を運転しながらスマートフォンを操作する「ながらスマホ」に似ていることが、本紙と専門家が行った実験で分かった。名古屋市で八月、ロードバイクが歩行者をはねて死亡させた事故でも、運転していた愛知県瀬戸市の男性調理師(54)が本紙の取材に応じ「(顔を上げると)目の前に人がいた」と証言した。専門家は「乗る側が危険性を認識し、場面に応じて速度を落とす必要がある」と警鐘を鳴らす。 実験は十一月末、愛知工科大の小塚一宏教授(交通工学)の協力を得て、視線の動きを追う特殊カメラを着けた学生ら四人で実施。一般に「ママチ
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