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日本における近代保守主義は、思想伝統としても政治的伝統としても、安定した実体を形成しなかった。〈中略〉近代日本の国家理性の中には、保守の原理を容れるようなゆとりがなかった。それはもっぱら権力原理にもとづく反動の機能をいとなむ場合にのみ、公認の役割を認められるという形になった。保守はある意味での権力原理に対する反対物であり、権力の発動形態としての反動とは本来結びつかない。しかし近代日本が明治開国にさいして選びとったものは強力国家という権力原理であり、保守と反動の区別は社会的実体と結びついて理解されるような条件がなかった。(橋川文三「保守主義と転向」『共同研究 転向 5』東洋文庫、平凡社、2013年、413頁 *初版は1959年) 2000年代に入ってから急速に日本で意味が軽くなった言葉のひとつに「保守」というものがある。 政治学で保守主義といえば、政治制度が制度疲労して変更せねばならない場合
梶谷懐 第15回 第4章:日本と中国のあいだ ――「近代性」をめぐる考察(3)―― 3. 日本と中国-異なりながら連動するモダニティ- さて、これまで論じてきたことから、日本の言論空間を以下のような二つの「二重性」を持つ物としてまとめることができるだろう。 1. 戦後日本の言論界は、表面上は西洋近代的な前提の下で様々な議論を行ってきた。しかし、それはより深層の部分で「アジア」的な要素により常に影響を受けてきた。この意味で西洋近代/アジアという「二重性」を持っている。 2. 戦前においてはアジア主義という形で、戦後においても文革をめぐる問題という形で、日本の言論空間が「アジア的なもの」に正面からコミットする場合がある。しかしその場合の「アジア的なもの」へのコミットは、最初は弱く・貧しい「アジアの民衆」(図の第Ⅲ象限)へのコミットメントという形をとるが、最後は専制的な権力(図の第Ⅱ象限)に絡め
ちょっと引用中心のメモ。 『明治の指導者たちは、人々を単なる支配の対象(object)ではなく、知識をもった自己規律的・自律的な主体(subject)として、つまり、フーコーのいう二重の意味での主体――「支配と依存」に服従させられた臣民(subject)であると同時に、「良識と自意識」によって自身のアイデンティティをもった存在としての主体(subject)――へとつくりかえてゆこうとしていたといえるのである。 この支配に関する新しい考え方こそが、高度に規律化された国民共同体と、統合的・全体包括的な国民文化へと一般民衆をとりこんでゆくことをねらった様々な政策を生み出したのであった。国家当局者の手によって正しい信仰のありかたが教示されるいっぽうで、地方の神社を破壊・統制したり、シャーマンや祈祷師やいわゆる淫祠などを迷信のたぐいとして規制し、民族宗教を攻撃するといった、啓蒙という名の一種の文化
よかった探し STAP細胞事件はまだ始まったばかりだが、事件の性質はすでに確定した。 O氏の手際の杜撰さは、ファン・ウソクやヘンドリック・シェーンと共通する。捏造したのが画期的業績(=必ずバレる)であることも同じだ。ある種の精神構造は、捏造が発覚することを気にかけないらしい。 共通点が目立つのと同じくらい、それぞれの事件の個性も目立つ。ファン・ウソク事件はナショナリズム抜きには語れない。ヘンドリック・シェーン事件は、共同研究者の責任という問題を提起した。では、STAP細胞事件の特徴はどこにあるのか。 私が思うに、それは「過剰」であることだ。 ファン・ウソクが2004年に捏造した業績は、2007年にほぼ現実のものとなった。ヘンドリック・シェーンの業績はこれよりは大げさだが、権威ある賞を複数受賞した、つまり学界でいったんは「ほぼ確定した話」と見なされた。STAP細胞事件に比べれば二人とも、もっ
江戸文化の第一人者である田中優子さんは、 きちんと検証もせずに「日本の伝統文化」という言葉を軽々しく使い、 政治利用していることについて、鋭く批判します。 たなかゆうこ 法政大学社会学部・メディア社会学科教授。専門は、日本近世文化・アジア比較文化。 1952年横浜生まれ。法政大学大学院博士課程修了。近世文学を専攻後、研究範囲は江戸時代の美術、生活文化、海外貿易、経済、音曲、「連」の働きなどに拡がってゆく。 江戸時代の価値観から見た現代社会の問題に言及することも多い。 書著に『江戸の想像力』(ちくま学芸文庫)、『江戸はネットワーク』(平凡社)、『江戸百夢』(朝日新聞社)、『江戸の恋』(集英社新書)『樋口一葉「いやだ!」と云ふ』(集英社新書)『江戸を歩く』(集英社ヴィジュアル新書)他、多数。
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