2022年のノーベル化学賞はアメリカのBertozzi教授らが受賞しました。合成化学系研究者の受賞は6年ぶりで、2016年にイギリスのStoddart教授ら3名が「分子マシンの設計と合成」1)で受賞して以来です。因みに、その前の合成化学系の受賞は根岸教授らになります。 今回は、2016年受賞のStoddart教授らの成果に関係が深く、実用化が近いと感じられるポリロタキサン材料について紹介します。 1.ロタキサン分子マシン 本題に入る前にStoddart教授のグループが提唱した「ロタキサン分子マシン」について簡単に説明します。 「ロタキサン」とは、環状分子の空洞部を直鎖状の軸分子が貫通し、軸分子の両端を嵩高い分子構造で封止し、環状分子が軸分子上で束縛(インターロック)された形態の分子集合体を言います。 ラテン語のrota(回転子)とaxis(軸)を語源としています。 【図1 ロタキサンの模式