このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。 政策評価プログラム(第五期:2020〜2023年度) 「教育政策のミクロ計量分析」プロジェクト 人的資本仮説によれば、教育政策は児童生徒の学業成績を決定する要因であり、成人後の所得にも密接に関係している。教育課程の基準(学習指導要領)の改訂は、人的資本の蓄積や国家の将来にとって特に不可欠と考えられる数多くの教育政策の一つである。クリティカルシンキングや知識の伝達を強化した体系的なカリキュラムは、学生の学習習慣や健全な特性を育み、社会に有能な人材を提供することができる。こ
少子高齢化で若年者が貴重な戦力となる中、採用選考は企業と学生、双方の成長に資するあり方へと変わることが求められている。教育と職業の接続を研究する東京大学の本田由紀教授(教育社会学)とリクルートワークス研究所の中村星斗研究員・アナリストが、選考にまつわる課題と今後進むべき方向性について語り合った。 ひそやかに存在するレリバンス 採用では評価されない 本田:私は教育の職業的意義(レリバンス)、つまり教育がその後の職業にどのように役立つのかを研究しています。日本は諸外国に比べ、職業的レリバンスが希薄だとされています。学生が学びにかけた時間とお金、そして良い授業をしようという教員の努力は本当に無駄になっているのか、だとしたらそれでいいのかという問題意識が研究の出発点です。 人文学・社会科学の分野で、学びの習得度と職業的な成果の関係を追跡調査した結果、大学での学びは、仕事のさまざまなスキルを高めてい
自信をもてない文系出身の若者 「自分は文系なので、専門性がないんです」 こうした趣旨の言葉を若手社会人から聞くことがある。文学等の人文科学系学部、経済学や法学等の社会科学系学部を卒業し、総合職として事務系職種に就職した若手社会人の言葉である。高校生に戻れるなら理系を選択したいという人もいる。専門性も「やりたいこと」もないので、条件だけで仕事を選んでいるという人もいた。条件で仕事を選ぶこと自体は自然なことだが、その背後には「自分にはできることがない」という思考が見え隠れしている。これらの声は、筆者が 2023 年 8 月~ 9 月に実施した入社 1 年目~ 3 年目までの若手社員 18 名に対する聞き取り調査(以降、聞き取り調査と表記)の結果をもとにしたものである。 文系出身の若手社会人が口にする「専門性がない」という表現を、筆者は職業人としての強みをもたないという自覚に起因する自信のなさと
本研究の目的は,専門教育で身につけた問題解決スキルが汎用性をもちうるかを明らかにすることである.PBL カリキュラムで口腔保健・福祉分野を学んでいるX 大学歯学部3年生を対象に,まず問題解決プロセスの習得度をパフォーマンス評価により直接評価した.ついで,そのうちの15名を対象に,専門教育で身につけた問題解決プロセスの理解度と日常場面への適用に関して学生インタビューを行った.その結果,専門教育で問題解決プロセスの理解度・習得度が高まると,そこで獲得した問題解決スキルは専門教育から遠い日常の場面へも転移しうることが示唆された.また,問題解決プロセスの理解度・習得度を高めるうえで,PBL での協調学習や学習課題の設定・情報探索が効果的である可能性が示された.これらの結果は,専門教育で身につけた能力が汎用性をもつ過程を例証している.
年末に、木簡研究がどうこうという噺に引っかけて、過去エントリの虫干しとしてアップしたこれに、 http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2022/12/post-0da822.html(木簡研究の職業的レリバンス) 本気で怒りをぶつけるツイートがあったのですが、 https://twitter.com/kirikomio/status/1612421121919549440 職業的レリバンスの観点だったら、実家が寺社教会(宗教法人等)の子が大学の宗教哲学科に行って家の跡を継ぐという、これ以上ない“職との結びつき”じゃないの。経済学部に行った人が企業の営業社員やるより職に直結してるよね。 https://twitter.com/kirikomio/status/1612426169663778816 この話の元は「木簡研究の職業的レリバンス」だが、大
This study clarified the "ived experience" of autonomous career development by analyzing the life story of the worker who migrated from Japan to the United States based on dialogical constructionism. The worker chose work styles and jobs that fit her circumstances as rational choices and strategies guaranteed by the social context (norms and common sense) in the U.S. and achieved autonomous career
センゲージ・グループ(Cengage Group)がまとめた2022年度の就職見込みリポートでは、米国の多くの新卒者が、自身が受けた教育に価値があるのか、キャリアの準備になっているのかについて、とまどいや不安を覚えていることが明らかになった。同リポートは、過去12カ月以内に学位または非学位プログラムを卒業した新卒者1000人を対象におこなわれた調査に基づいている。 センゲージ・グループによる就職見込み調査は、現在の新卒者が就職市場に対してどのような印象を抱いているかを調べるもので、昨年に続いて2回目になる。調査対象は、従来の学位プログラム(準学士、学士、修士)および非学位プログラム(職業訓練や履修証明)の卒業生であり、彼らの回答を集計・比較した。 主な結果は以下の通りだ。 ・新卒者たちは、自分が受けた教育が、キャリアの「準備」になっているかどうかに疑問を抱いている。大学の学位プログラム卒業
(はまなか・じゅんこ)東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。専門は、教育社会学、高等教育論。リクルートワークス研究所研究員、独立行政法人大学入試センター助教、准教授、教授、東京大学高大接続研究開発センター教授を経て、2019年より現職。著書に『検証・学歴の効用』『「超」進学校 開成・灘の卒業生――その教育は仕事に活きるか』など。 開成、灘、浦和、湘南の卒業生を調査してみると……――このところ理系の就職率が高いこともあって、「理系がお得」という風潮がありますが、文系と理系で差があるのでしょうか。 2013年から18年にかけて、開成(東京)と灘(兵庫)の私立高校と、浦和(埼玉)と湘南(神奈川)の県立高校に協力してもらい、主に30~50代の卒業生を対象に、中高時代や大学時代の状況、就職後の状況、現在の仕事などについて調査しました。この中で年収も聞いていますが、人文・社会系の学部
社会的レリバンスの高い教育課程設計と 評価のあり方について 本田由紀(東京大学大学院教育学研究科教授) 1 資料1 日本の教育の問題点 2 義務教育段階から学力保障が形骸化、家庭が持つ諸資源の 多寡が子世代に直接的に影響、公立中高一貫制や高校学 区広域化・撤廃などの制度改変、「コミュニケーション能力」等 に基づく生徒間の「カースト化」 →「学力」と「生きる力」の両面で教育の格差化がいっそう進行 社会生活や将来の仕事に対する教育のレリバンスの希薄さ ・抽象的な記号操作能力に関する教育がいまだ支配的 ・職業教育機関の量的少なさ、地位の低さ ・精神主義的なキャリア教育はむしろ不安を拡大 全体として、「形式的平等」のもとに「学力」と「生きる力」の 「垂直的多様化」が進行しており、すべての者に「居場所と出 番」 を確保する「水平的多様化」にはなっていない。 3 日本の教育の現状 家庭の経済状況と子ど
アメリカ在住34万人対象の高等教育歴に関する調査 高等教育の費用対効果とエンプロイアビリティへの満足度に違い 教育の価値への評価が高かったのは職業・技術教育と大学院教育 ストラダ・エデュケーション・ネットワークは、アメリカに住む34万人に電話アンケートを行い、高等教育の費用対効果とエンプロイアビリティへの効果を調査した。2019年11月に公表された報告書Changing the Value Equation for Higher Educationによると、回答者自身の経験からアメリカの職業・技術教育と大学院教育が最も高い費用対効果とエンプロイアビリティの向上をもたらすことが明らかになった。一方で、幅広いスキルを準備するリベラルアーツ分野の学部教育は評価を得ておらず、大学が助言、指導、実習機会の提供などを通じて教育の価値を高める必要があるとまとめた。 教育段階別の結果 調査は、アメリカ全5
「大学での学びは、社会で役に立つか」は、久しく論じられてきたテーマだ。日本社会では、特に企業等の採用の場面で大学での学びが重視されない傾向もあり、「一部の専門職を除いて、大学での学びは社会でさほど役に立たない」という意見が、大半ではないだろうか。 平成25年5月に出された、教育再生実行会議による第三次提言「これからの大学教育等の在り方について」の冒頭で、 『教育再生は、個人の能力を最大限引き出し、一人一人が国家社会の形成者として社会に貢献し責任を果たしながら自己実現を図り、より良い人生を生きられる手立てを提供するという教育の機能が十分果たせるようにする改革です。その実現には、教育を集大成し社会につなぐ大学の役割は決定的に重要です。』 と記されている。『決定的に重要』とまでいわれる、『教育を集大成し社会につなぐ大学の役割』が機能していないとすれば大問題である。この点については、大学卒業から就
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