私はかつて『法学入門』と題する本のなかで、法学入門者に対する法学研究上の注意について多少のことを書いた。同書は元来、「現代法学全集」の読者を相手として書かれたもので、いわば法学研究者一般、殊に独学者を仮想の相手として書かれたものである。ここではこれと違って、この四月新たに諸大学の法学部に入学された諸君を特に相手として、勉学上注意されたらいいと思うことを一、二述べてみたいと思う。その種の注意は、諸大学の教授諸氏によってそれぞれ適当に与えらるべきものなること、もとより言うを俟(ま)たないし、また実際にもいろいろ好い注意が与えられていることと想像するが、私が今まで多数の法学生ないし法学士と会談した経験から推すと、案外その種の注意が学生には徹底していないのではないか、学生の多数は彼らの研究する学問の特質を知らず、従ってまた、いかなる態度方法で聴講し、また研究すればいいのかというようなことについて適