1. 選択的別姓はパレート改善的制度である サイボウズの青野慶久氏による訴訟の一審が敗訴となった。筆者はこの問題が民法改正を求めるのが正論ではあると思うものの、現民法は憲法違反であるとの訴訟が敗訴した状況を踏まえ、戸籍法を盾にとった青野氏の独創性は高く評価している。もちろん、選択的別姓支持の立場からである。 筆者が選択的別姓を支持するのは、これがパレート改善的制度だからであり、自由主義的社会制度設計の基本概念にかかわるものだからである。日本において選択的別姓のパレート改善性に言及したものがあるかどうか検索したら、2017年の青山学院大学の『青山国際政策論集』で瀬尾佳美・飯坂ひとみ共著の論文があることが分かったが、それ以外には見当たらない。パレート最適とかパレート改善という用語は経済学者の一部を除いて日本で多く用いられることはないからであろうか。しかし米国では自由主義的哲学(あるいは功利主義