永井 裕子(ながい ゆうこ) 社団法人 日本動物学会 事務局長・UniBio Press代表/筑波大学大学院図書館情報メディア研究科 博士後期課程 ● はじめに 学術情報の流通は、書籍やジャーナルによる冊子体が流通することよって、長く行われてきた。情報は冊子が、手に取られ読まれることで、人から人へ渡されることで、流通した。グーテンベルグによって、それは爆発的にもたらされたものだと言えるが、それ以前でも、羊皮紙やパピルスに書かれた「本」によって、様々な情報は人々の間で流通していた。書かれたものは、同時に『保存』を意味した。そして、小説、詩、エッセイなどと共に、学術論文も、書籍、ジャーナル冊子によって流通する長い時代を経て来た。しかし、学術情報が流通するという意味は、小説が人々に好まれ、版を重ねて読まれることとは、根本的に異なる。学術情報は、積み重ねられ、新たな科学的発見をまた生み出すための、