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ブックマーク / sskdlawyer.hatenablog.com (19)

  • 大学教授の労働問題-過半数代表者が無投票を有効投票による決定に委ねたものとみなしたうえで選出されているとして、専門業務型裁量労働制が違法とされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.専門業務型裁量労働制 専門業務型裁量労働制とは、 「業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度」 をいいます。 専門業務型裁量労働制 この仕組みは一定の労働時間を擬制する制度です。つまり、実際に働いた時間の長短とは関係なく、「あらかじめ定められた時間数」働いたものとして取り扱われます。こうした法的効果があることから、しばしば時間外勤務手当等(いわゆる残業代)を支払わない便法として用いられています。 専門業務型裁量労働制の根拠条文である労働基準法38条の3は第1項の柱書で次のとおり規定しています。 「使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があ

    大学教授の労働問題-過半数代表者が無投票を有効投票による決定に委ねたものとみなしたうえで選出されているとして、専門業務型裁量労働制が違法とされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ
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    high190 2024/05/17
    "松山地判令5.12.20労働経済判例速報2544-3 学校法人松山大学事件"
  • 大学教授の労働問題-学部長の管理監督者性(否定) - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.管理監督者性 管理監督者には、労働基準法上の労働時間規制が適用されません(労働基準法41条2号)。俗に、管理職に残業代が支払われないいといわれるのは、このためです。 残業代が支払われるのか/支払われないのかの分水嶺になることから、管理監督者への該当性は、しばしば裁判で熾烈に争われます。 管理監督者とは、 「労働条件その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」 の意と解されています。そして、裁判例の多くは、①事業主の経営上の決定に参画し、労務管理上の決定権限を有していること(経営者との一体性)、②自己の労働時間についての裁量を有していること(労働時間の裁量)、③管理監督者にふさわしい賃金等の待遇を得ていること(賃金等の待遇)といった要素を満たす者を労基法上の管理監督者と認めています(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅰ」〔青林書院、改訂版、令3〕249-250参照)。

    大学教授の労働問題-学部長の管理監督者性(否定) - 弁護士 師子角允彬のブログ
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    high190 2024/05/17
    "松山地判令5.12.20労働経済判例速報2544-3 学校法人松山大学事件"
  • 入試の合否判定に係る評価点の改ざん行為等を理由とする懲戒解雇-個人的利益を図る目的がなくても解雇有効とされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.入試不正等に関する大学教員の労働事件 大学教員の方が懲戒処分を受ける類型の一つとして、入学試験や単位認定、成績評価に係る不正行為が挙げられます。 ただ、個人的な経験や観測の範囲で言うと、私的な利益を図るために不正行為を行うといった事例は、あまりありません。概ねの場合、不正行為は、大学や学生の利益に対する配慮から行われています。私利私欲を図ってやったわけでもないのに、懲戒解雇といった予想外に重い処分を受け、その効力を法的に争うことができないかと相談に来られることがパターンが多く見られます。 私的利益が図られていない事案では、経緯を聞いていると気の毒に思うことが少なくありません。しかし、裁判所は、入学試験や単位認定、成績評価に係る不正行為を、重大な非違行為とみる傾向があるように思います。近時公刊物に掲載されていた、横浜地判令6.2.8労働判例ジャーナル145-10 国立大学法人横浜国立大学

    入試の合否判定に係る評価点の改ざん行為等を理由とする懲戒解雇-個人的利益を図る目的がなくても解雇有効とされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ
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    high190 2024/05/10
    "横浜地判令6.2.8労働判例ジャーナル145-10 国立大学法人横浜国立大学事件"
  • 大学教員に対する懲戒処分-成績評価資料の提出を求められ、架空の課題を作出することの問題点 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.大学教員に認められる成績評価を行う権限 大学当局から成績評価資料の提出を求められ、架空の課題を作出し、虚偽の内容の資料を提出したというと、不適切だと考える方は少なくないのではないかと思います。 しかし、学生の成績評価を行う権限は、基的には当該科目を担当している大学教員に帰属しています。成績評価自体は公正に行われてている場合、事後的に虚偽の内容の資料を提出しようが、そのようなことは大した問題ではないという理解が成り立つ余地はないのでしょうか? 昨日ご紹介した、横浜地判令6.2.8労働判例ジャーナル145-10 国立大学法人横浜国立大学事件は、この問題を考えるにあたっても参考になります。 2.国立大学法人横浜国立大学事件 件で被告になったのは、横浜国立大学を運営している国立大学法人です。 原告になったのは、被告との間で期間の定めのない労働契約を締結し、教授として勤務していた方です。入試

    大学教員に対する懲戒処分-成績評価資料の提出を求められ、架空の課題を作出することの問題点 - 弁護士 師子角允彬のブログ
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    high190 2024/05/10
    "横浜地判令6.2.8労働判例ジャーナル145-10 国立大学法人横浜国立大学事件"
  • 法科大学院の廃止に伴い実務家教員を整理解雇するために求められる解雇回避努力-法学部から科目確保を断られたら仕方ないとされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.専門職大学院の実務家教員の整理解雇解雇回避努力 専門職大学院で行われている教育内容は、学部教育の延長線上にあることも少なくありません。例えば、法科大学院での教育内容は、法学部での教育内容をより高度に発展させた形になっています。 そうであるとするならば、実務家教員を整理解雇するにあたっては、解雇回避努力として、学部での受け入れの可否が模索されるべきだとはいえないのでしょうか? 昨日ご紹介した、福岡地判令6.1.19労働判例ジャーナル145-1 学校法人西南学院事件は、この問題を考えるうえでも参考になる判断を示しています。 2.学校法人西南学院事件 件で被告になったのは、西南学院大学を設置する学校法人です。西南学院大学には、法学部と大学院法務研究科(法科大学院)が設置されていました。 原告になったのは、被告との間で無期労働契約を締結し、被告の法科大学院で就労していた弁護士です。元々は有

    法科大学院の廃止に伴い実務家教員を整理解雇するために求められる解雇回避努力-法学部から科目確保を断られたら仕方ないとされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ
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    high190 2024/04/24
    "福岡地判令6.1.19労働判例ジャーナル145-1 学校法人西南学院事件"
  • 専門職大学院の廃止に伴う実務家教員の整理解雇 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.専門職大学院の実務家教員 学校教育法99条は、次のとおり規定しています。 「第九十九条 大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする。 ② 大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とする。 ③ 専門職大学院は、文部科学大臣の定めるところにより、その高度の専門性が求められる職業に就いている者、当該職業に関連する事業を行う者その他の関係者の協力を得て、教育課程を編成し、及び実施し、並びに教員の資質の向上を図るものとする。」 この学校教育法99条2項に基づいて設置された大学院を、専門職大学院といいます。 専門職大学院には、 【ビジネス・MOT】 【会計】

    専門職大学院の廃止に伴う実務家教員の整理解雇 - 弁護士 師子角允彬のブログ
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    high190 2024/04/23
    “福岡地判令6.1.19労働判例ジャーナル145-1 学校法人西南学院事件”
  • 指導教授の単著論文(交際関係にあった学生の修士論文と約70%の表現が同一)が「盗用」に該当するとされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.指導教授等による研究業績の剽窃 労働事件におけるハラスメントと構造的に類似することや、大学教員の方の労働事件を比較的多く受けている関係で、アカデミックハラスメントは個人的な興味研究の対象になっています。 アカデミックハラスメントに関する相談の一つに、指導教授や上位の研究者に研究成果を盗用されたというものがあります。 アカデミックハラスメントを対象とする裁判例ではありませんが、近時公刊された判例集に、研究不正の一態様である「盗用」の解釈が示された裁判例が掲載されていました。大阪地判令6.1.11労働経済判例速報2541-18 学校法人関西大学事件です。 2.学校法人関西大学事件 件で被告になったのは、関西大学等を運営する学校法人です。 原告になったのは、被告との間で雇用契約を締結し、教授の職位にあった方です。職員研修制度により、大学院の博士課程前期課程の院生となったAの指導教員として、

    指導教授の単著論文(交際関係にあった学生の修士論文と約70%の表現が同一)が「盗用」に該当するとされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ
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    high190 2024/04/15
    "大阪地判令6.1.11労働経済判例速報2541-18 学校法人関西大学事件"
  • 感情を荒らげることなく淡々とした口調で話していても、アカデミックハラスメントが成立するとされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.アカデミックハラスメント 大学等の教育・研究の場で生じるハラスメントを、アカデミックハラスメント(アカハラ)といいます。 多くの大学はアカデミックハラスメントをハラスメント防止規程等で禁止しています。しかし、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントとは異なり法令上の概念ではないことから、どのような行為がアカデミックハラスメントに該当するのかは、必ずしも明確ではありません。 職務上、大学教員・大学職員の方の労働問題を取り扱うことが多いことから、何がアカデミックハラスメントに該当するのかには関心を有していたところ、近時公刊された判例集に、長時間にわたり反論の機会をほとんど与えることなく追及し続けたことがアカデミックハラスメントに該当するとされた裁判例が掲載されていました。高松高判令5.9.15労働判例ジャーナル142-56 損害賠償請求(アカデミック・ハラスメント)事件です。 2.損害

    感情を荒らげることなく淡々とした口調で話していても、アカデミックハラスメントが成立するとされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ
  • 歓迎会二次会のカラオケで行われた男性の脱ぎ芸が、女性参加者に対するセクハラ(不法行為)を構成するとされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.セクシュアルハラスメント 「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」を「職場におけるセクシュアルハラスメント」といいます。 職場におけるセクシュアルハラスメントには、 「職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの」(対価型セクシュアルハラスメント) と、 「当該性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの」(環境型セクシュアルハラスメント) があるとされています(平成18年厚生労働省告示615号「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」参照)。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605548

    歓迎会二次会のカラオケで行われた男性の脱ぎ芸が、女性参加者に対するセクハラ(不法行為)を構成するとされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ
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    high190 2024/01/23
    "これからの時代、場を盛り上げるにあたっては、衣類を脱ぐなど、品位に疑義を持たれるような方法は避ける必要があります"
  • 職場で行われる陰口が、労働者に対するハラスメント(不法行為)にあたるとされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.労働者人がいないところで言われる揶揄・侮辱 労働者人がいないところで言われる揶揄や侮辱は、ハラスメント(不法行為)を構成することがあり得るのでしょうか? 当人が知らないのであれば、揶揄や侮辱があったとしても、精神的な苦痛(損害)は発生しないという見方があります。 しかし、当人が知らなかったとしても、経営者が他の労働者と一緒になって当人の悪口で盛り上がっていれば、職場全体に「この人のことは馬鹿にしてもいい」という空気が醸成されることになり、真綿で首を絞められるように職場環境が悪化して行くという考え方も成り立つはずです。 近時公刊された判例集に、この職場で行われる陰口について、不法行為該当性を認めた裁判例が掲載されていました。東京高判令5.10.25労働判例ジャーナル142-22 医療法人社団Bテラス事件です。これは以前、マタハラ(マタニティハラスメント)事件としてご紹介した事件の控訴

    職場で行われる陰口が、労働者に対するハラスメント(不法行為)にあたるとされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ
  • 公務員-違法な懲戒処分に引き続いて行われた配転命令の国家賠償法上の違法性 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.懲戒処分に引き続いて行われる配転命令 公務員に限ったことではありませんが、懲戒処分に引き続いて配転を命じられることがあります。国側・地方公共団体側・使用者側からすれば引き続き同じ業務を担当することが好ましくないということなのだと思われますが、職員側・労働者側からすると左遷人事のように感じられることが少なくありません。 それでは、懲戒処分が取消訴訟等で違法だと判示された場合、この配転命令の違法/適法は、どのように判断されるのでしょうか? この問題を考えるにあたり参考になる裁判例が、近時公刊された判例集に掲載されていました。京都地判令5.4.27労働判例ジャーナル141-30 京都市事件です。 2.京都市事件 件で被告になったのは、京都市です。 原告になったのは、京都市児童相談所において主任として勤務していた方です。京都市長から停職3日の懲戒処分(件懲戒処分)を受け、その取消を求める訴

    公務員-違法な懲戒処分に引き続いて行われた配転命令の国家賠償法上の違法性 - 弁護士 師子角允彬のブログ
  • 公務員の懲戒処分-違法な懲戒処分の取消訴訟に要した弁護士費用実額の損害賠償請求が認められた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.弁護士費用を相手方に請求できるか? 弁護士費用は自弁するのが原則です。裁判に勝っても、相手方に弁護士費用を転嫁することはできません。その代わり、裁判に負けても、相手方から弁護士費用を転嫁される心配はありません。 しかし、一定の類型の損害賠償請求に関しては、弁護士費用の一部を損害として計上することが認められています。具体的に言うと、不法行為に基づく損害賠償請求や、安全配慮義務に基づく損害賠償請求では、弁護士費用のうち損害額の10%程度の金額を損害として計上することが認められています(最一小判昭44.2.27最高裁判所民事判例集23-2-441、最二小判平24.2.24最高裁判所裁判集民事240-111参照)。 また、これを超えて、弁護士費用実額を損害として認めた事例も少数ながら存在します。例えば、大阪地判平29.8.30判例タイムズ1445-202は、インターネット上の名誉毀損が関係する

    公務員の懲戒処分-違法な懲戒処分の取消訴訟に要した弁護士費用実額の損害賠償請求が認められた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ
  • 公立大学の理事はどのような場合に解任されるのか? - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.公立大学法人 公立大学法人という仕組みがあります。 地方独立行政法人法に基づいて設立されている一般地方独立行政法人の一種で、 「一般地方独立行政法人で第二十一条第二号に掲げる業務を行うもの」 と定義されています(地方独立行政法人法68条1項)。 地方独立行政法人法21条2号は、 「大学又は大学及び高等専門学校の設置及び管理を行うこと並びに当該大学又は大学及び高等専門学校における技術に関する研究の成果の活用を促進する事業であって政令で定めるものを実施する者に対し、出資を行うこと」 を掲げており、これと組み合わせると、公立大学法人とは、大学等の設置・管理を行う法人を意味することになります。 公立大学法人の理事ら役員の解任事由について、地方独立行政法人法17条2項は 「設立団体の長又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号のいずれかに該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるとき

    公立大学の理事はどのような場合に解任されるのか? - 弁護士 師子角允彬のブログ
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    high190 2023/11/15
    "山口地判令5.7.12労働判例ジャーナル139-40 公立大学法人下関市立大学事件"
  • 部下への接し方に問題がある上司が原因で、部署全体の雰囲気が悪くなり、自殺者が出た例 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.パワーハラスメントに対処しなければならないのは? 職場において行われる ① 優越的な関係を背景とした言動であって、 ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、 ③ 労働者の就業環境が害されるもの をパワーハラスメントといいます(令和2年厚生労働省告示第5号『事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針』参照)。 パワーハラスメントに対し、企業は法令に基づいて適切な対応をとらなければなりません。これは被害者のためだけではありません。ハラスメントを放置すると、部署全体の雰囲気が悪くなり、仕事が停滞するからでもあります。 しかも、被害者のダメージと部署全体の雰囲気の悪化は、しばしば悪循環を生じさせます。ハラスメントを目の当たりにしてるのを見て、部署全体が自由に発言をしにくい雰囲気になり、その雰囲気がますます被害者を委縮させ

    部下への接し方に問題がある上司が原因で、部署全体の雰囲気が悪くなり、自殺者が出た例 - 弁護士 師子角允彬のブログ
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    high190 2023/09/06
    "新潟地判令4.11.24労働経済判例速報2521-3 新潟市事件”
  • 大学における授業等に係る担当外しは、一般企業における配置転換の場合にも増してその当否を厳重に検討する余地があるとされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.大学教員にとっての授業 大学教員にとって、授業は特別な意味を持ちます。労働契約上の義務であるとともに、研究発表の自由、教授の自由といった価値との関係から、権利としての性質もあります。こうした特殊性は、多くの裁判例でも承認されています。例えば、東京地判令4.4.7労働経済判例速報2491-3 学校法人茶屋四郎次郎記念学園事件は、 「一般に、労働契約における労務の提供は労働者の義務であって、原則として、使用者はこれを受領する義務(労働者を就労させる義務)を負うものではない。もっとも、大学の教員が講義等において学生に教授する行為は、労務提供義務の履行にとどまらず、自らの研究成果を発表し、学生との意見交換等を通じて学問研究を深化・発展させるものであって、当該教員の権利としての側面を有する。」 と判示しています。 当事務所では大学教員の方の労働事件を扱うことが多く、大学関係の事件は注視しているの

    大学における授業等に係る担当外しは、一般企業における配置転換の場合にも増してその当否を厳重に検討する余地があるとされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ
  • 部下(学科教員)から上司(学科長)に対するパワーハラスメントの否定例 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.部下から上司に対するパワーハラスメント パワーハラスメントとは、 職場において行われる ① 優越的な関係を背景とした言動であって、 ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、 ③ 労働者の就業環境が害されるものであり、 ①から③までの要素を全て満たすものをいう とされています(令和2年厚生労働省告示第5号「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」参照)。 このうち①の「優越的な関係」とは、上司と部下のような関係が典型です。 しかし、部下から上司に対する言動も、パワーハラスメントに該当しないわけではありません。例えば、 「同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの」 などは、「優越的な関係を背景とした」言

    部下(学科教員)から上司(学科長)に対するパワーハラスメントの否定例 - 弁護士 師子角允彬のブログ
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    high190 2023/01/30
    "ハラスメントに厳しいこととハラスメント概念を濫用することとは違う"
  • アカデミックハラスメント-学生に対するハラスメントの懲戒事由該当性が否定された例 - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.アカデミックハラスメント 大学等の教育・研究の場で生じるハラスメントを、アカデミックハラスメント(アカハラ)といいます。 セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメントとは異なり、法令上の概念ではありませんが、近時、裁判例等で扱われることが多くなってきています。職務上、大学教員・大学職員の方の労働問題を取り扱うことが多いことから、個人的に関心を持っている領域の一つです。 アカデミックハラスメントの特徴は、職場の同僚間、上司-部下の間だけではなく、学生との関係でも問題になることです。 学生に対するアカデミックハラスメントの成否を検討するにあたっては、パワーハラスメントで業務上の指導との区別が問題になるのと類似した問題が生じます。具体的に言うと、教育的指導との区別が問題になります。 近時公刊された判例集に、学生に対するハラスメント等を理由とする懲戒の可否が問題になった

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  • 大学教員の公募-不合格者に対し採用選考過程や評価についての情報開示・説明義務を負うのか? - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.大学教員の公募は出来レースか? 大学教員の公募に関しては、採用選考が適切に行われていないのではないかという懸念を抱く方が少なくありません。例えば、公募と銘打ってはいるものの、誰を採用するのかは既に決まっていたのではないかといったようにです。 それでは、採用選考過程に疑義がある場合、不合格者は大学に対して採用選考過程や自身への評価についての情報開示や説明を求めることができないのでしょうか? この問題を考えるにあたり、近時公刊された判例集に参考になる裁判例が掲載されていました。東京地判例4.5.12労働判例ジャーナル129-48 学校法人早稲田大学事件です。 2.学校法人早稲田大学事件 件で被告になったのは、早稲田大学等を設置している学校法人です。 原告になったのは、中国政治及び中国社会論を研究分野とする政治学者の方(原告A)と、その方が加入している労働組合(原告組合)です。 被告は、

    大学教員の公募-不合格者に対し採用選考過程や評価についての情報開示・説明義務を負うのか? - 弁護士 師子角允彬のブログ
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    high190 2023/01/04
    "東京地判例4.5.12労働判例ジャーナル129-48 学校法人早稲田大学事件(中略)裁判所は、採用選考過程や評価についての情報開示・説明義務の存在は認められないと判示"
  • 有期契約の大学講師の無期契約に移行してもらうことに向けられた期待を雇止め法理で救済できるか? - 弁護士 師子角允彬のブログ

    1.大学講師の特殊性と雇止め法理 大学講師の方は、任期制のもと、有期の労働契約を交わして働いている方が少なくありません。こうした方の多くは、好んで有期契約を結んでいるというよりも、無期契約に移行してもらうことを期待しながら働いています。 この無期契約に移行してもらえるという期待を、雇止め法理の中で保護することはできないのでしょうか? こうした問題意識が出てくる背景には、次のような事情があります。 有期労働契約は期間の満了により終了するのが原則です。 しかし、 「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる」 場合、使用者側で契約更新を拒絶するためには、客観的合理的理由、社会通念上野の相当性が必要になります(労働契約法19条2号)。これを雇止め法理といいます。 雇止め法理の適用により雇用期

    有期契約の大学講師の無期契約に移行してもらうことに向けられた期待を雇止め法理で救済できるか? - 弁護士 師子角允彬のブログ
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