思想家の柄谷行人氏が『坂口安吾論』を、十月十四日上梓した。 これまで柄谷氏は、安吾論として、『坂口安吾と中上健次』(太田出版、講談社文芸文庫)を著わしてきたが、著者初の単独の安吾論集となる。 七割が単行本初収録論文であり、天皇制や「死の欲動」(フロイト)の問題と絡めて、斬新な切り口を提示している。古代政治や憲法、歴史学についても、すべて安吾から学んだと、柄谷氏は語る。真の意味での「無頼」とはなにか。今まさに坂口安吾が必要とされている――。 刊行を機に、柄谷氏にお話をうかがった。 (編集部) ――この度、文芸批評の新著を、久しぶりに刊行されました。また、坂口安吾に関する書物としては、一九九六年に上梓された『坂口安吾と中上健次』以来、ほぼ二十年ぶりとなります。中心となるのは、第一部に収められたエッセイで、筑摩書房版『坂口安吾全集』(全十七巻・別巻一、一九九八~九九年)の月報に寄せられた文章とな