I/O Brushは、私の研究グループから'05年春に博士号を取得して卒業した了戒公子の博士論文研究の成果である。このプロジェクトは、彼女とその同僚ステファン・マルティ、そして私の、2年間にわたる共同作業のアウトプットだ。 I/O Brushをひと言で表すなら、絵を描くためのブラシということになるだろう。しかし、ただのブラシではない。自分を取り巻く物理環境から色やテクスチャー、さらに動きまでをピックアップし、それを絵の具として用いながら絵を描くことを可能にする、新しい表現ツールなのである。 一見普通のブラシのように見えるI/O Brushだが、内部には小型ビデオカメラと光源、タッチセンサーなどを搭載しており、外界から色/テクスチャー/動きなどをキャプチャーする。そして、大型のフラットディスプレーを使った「キャンバス」の上に、画家は外界から取り込んだ自分だけの特別な「絵の具」で、自由自在に絵