は じ め に 近年自由主義、あるいはリベラリズムに関わる文献が数多く刊行されている。また、実際の政治の場面でも「リベラル」というシンボルのもとに政党再編の動きがあり、政治家たちの発言一つとっても、この「リベラル」がキータームになっている場合が多い。学会レベルでは、一九九二年度政治学会の共通論題として「リベラリズムの現在」が取り上げられ、九五年度の政治思想学会では「共同体論の射程」からリベラリズムが論じられた。朝日新聞に思想史家、武田清子の論文「日本人とリベラリズム」が掲載されたのは記憶に新しい(一九九二年九月二五日付)。政界における「リベラル」、あるいは「自由主義」という言葉の氾濫は論外にしても、国内外の政治状況を背景に活発化している自由主義をめぐる論議こそ現代的課題にたいする知的応答の一つといってよい。 いうまでもなく多岐にわたる議論を誘発した現象とは東欧・ソ連邦の体制であった社