本書は天皇にまつわる儀礼や制度には「伝統」と称していながら本当の伝統ではなく、明治維新のあとに創られたものが紛れ込んでいることを指摘している。その中から6つをあげて、「有識者」たちの間違いによって国民が思いこまされている事柄の訂正を試みている。 まずは天皇の「お田植え」と皇后の「ご養蚕」。どちらも近代になってから始まったものにすぎない。背後には儒教思想があり、その教義を近代社会の要請に合わせたのであった。つまり、伝統ではなく、非常に近代的な行為なのである。 次に天皇や皇室の墓。ヤマト政権時代の古墳やそれを模倣した神武天皇陵を見て、天皇は古来ずっと神道のやり方で葬られたと誤解している人たちがいる。しかし、「天皇」という称号を使いはじめてまもない8世紀から明治維新の直前まで、1250年間にわたって天皇は仏教式に葬られていた。そして、大きな墓も造らなかった。孝明天皇 (明治天皇の父君) から古制