故郷の就職は地獄 本州中部地方の某市──。駅前には、この町からノーベル賞受賞者を輩出したことを示す案内が掲げられている。丸山利香さん(仮名・29歳)は高校までここに育ち、卒業後は都内の国立大学に進学した。数年前、老いゆく家族とともに、自然豊かな地で暮らしたいと考え、ふるさとに戻った。 *** 理数系の学部を卒業した彼女は就職に困ることもない、世間では才媛と呼ばれる経歴の持ち主だ。 実際、東京の大企業からの内定もでた。しかし、それを蹴っても、地元に帰ろうと決意したのだ。コロナ禍の前ではあったが、折しも二拠点居住ブーム、地方移住ブームであり、自治体や傘下団体によるIターン、Uターンのための就労説明会は都内で連日のように開かれていた。 丸山さんは県内でも大手の会計事務所に就職し、仕事をしながら地道に公認会計士試験に挑戦しようかな、という考えも芽生えた。 将来は実家で家族の面倒を見ながら、独立して