鯨肉の竜田揚げは懐かしい。昭和30、40年代小学校の給食に出た。やがて豚や牛の肉が普及し商業捕鯨が封じられ、とんと口にしなくなった。今鯨肉は「日本の食文化」と聞かされてもピンとこないのは山国信州人ゆえでもないらしい ◆ 年間23万トンだった消費量はこの50年で5千トンほどに。1人当たりで年間30グラムだ。それなのに「日本の食文化」のイメージが根強いのは、40年ほど前から展開された広報戦略の影響という。捕鯨団体から委託を受けた民間会社が成功事例として挙げている ◆ 同社は大手新聞社に働きかけて鯨食文化論を社説に定着させ、捕鯨に好意的な流れをつくった。だが実態と懸け離れる食文化論は海外に誤解を広げた。商業捕鯨を再開すれば日本人が大量に鯨肉を食べるに違いない、と。ジャーナリスト佐久間淳子さんの調査が本紙に載っていた ◆ 一方の反捕鯨派。米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」は残虐性を強調し沿岸捕鯨